小特集 1. 社会インフラとしての移動通信システムの発展

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.103 No.2 (2020/2) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


移動通信システムの発展と展望

小特集 1.

社会インフラとしての移動通信システムの発展

Evolution of Mobile Communication Systems as Social Infrastructure

尾上誠蔵

尾上誠蔵 正員:フェロー ドコモ・テクノロジ株式会社

Seizo ONOE, Fellow (DOCOMO Technology Inc., Tokyo, 107-0052 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.2 pp.110-116 2020年2月

©電子情報通信学会2020

abstract

 移動通信システムの代表格であるセルラシステムはその高い普及率と性能向上により利用形態が広がり,人々の生活や産業に不可欠な社会インフラストラクチャに発展してきた.第1世代から第5世代に至るセルラシステムの進化について,技術面,標準化,生活や社会への影響の側面から概説する.音声通信から始まったシステムにデータ通信が加わり,通信手段から情報アクセス手段としての利用に進化した.更にモバイルブロードバンドを実現する一方で,IoT等の企業向けソリューション等,様々な産業への応用の広がりが期待されている.

キーワード:移動通信システム,セルラシステム,第5世代,5G,LTE

1.は じ め に

 移動通信システムは人々の生活や社会に必要不可欠なインフラストラクチャに発展してきた.移動通信の起源は1899年のマルコーニの無線電信伝送まで遡るほど古く,移動電話サービスは米国で1947年に開始された.日本初の商用移動通信サービスは1953年に開始された船舶通信サービスであった.その後,自動車電話システムが導入され,今日の携帯電話システムになった.スマートフォン等,個人の通信手段や情報へのアクセス手段だけでなく,機器の制御等,いわゆるIoT(Internet of Things)にも利用が広がっている.移動通信システムの範囲は広く,船舶電話から列車電話,航空機電話,ページャ(ポケットベル),コードレス電話,PHSや移動衛星通信システム等,様々なシステムや技術が登場した.本稿では,今日の携帯電話システムに発展したセルラシステムに焦点を当てて,その世代の発展経緯,社会への影響を概説する.

2.移動通信システム世代の進化

 世界初のセルラ方式の公衆移動通信システムは1979年に日本で商用開始した自動車電話システムである.その後,おおむね10年ごとに新しい世代のシステムが開発導入されてきた.1980年頃のアナログ方式は遡って第1世代移動通信と呼ばれ,1990年頃のディジタル方式が第2世代,2000年頃のITU(International Telecommunication Union)標準のIMT-2000が第3世代,2010年頃のLTEが第4世代,2020年頃,2020年を待たず世界で導入が始まった第5世代と続いている.

2.1 技術面から見た世代の進化

 世代を追うごとに新しい無線アクセス方式やネットワーク機能が進化してきた.無線アクセス方式は,第4世代までは新しい方式になり技術主導で発展してきた.第5世代は産業界からの期待が大きくビジネス主導となってきたと言える(図1).

図1 移動通信世代と技術


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。