小特集 2. 第1世代・第2世代移動通信方式─パーソナル通信の実現─

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移動通信システムの発展と展望

小特集 2.

第1世代・第2世代移動通信方式

――パーソナル通信の実現――

The 1st and 2nd Generation Mobile Communication Systems: Realization of Personal Communications

服部 武

服部 武 正員:フェロー 上智大学理工学部情報理工学科

Takeshi HATTORI, Fellow (Faculty of Science and Technology, Sophia University, Tokyo, 102-8554 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.2 pp.117-129 2020年2月

©電子情報通信学会2020

abstract

 本稿では,第1世代と第2世代の移動通信方式について技術,及び標準化の状況について述べる.理解を深めるため,無線系のみでなく,ネットワークや番号,課金などについても,それらの特徴も併せて述べる.第1世代は,自動車電話で,無線通信方式は,音声をアナログのまま伝送する方式で,アナログ方式とも呼ばれている.実現の過程での日米貿易摩擦の影響についても述べる.第2世代は,音声,制御信号全てをディジタルで提供する全ディジタル方式の実現である.パケット方式の導入及び関連するサービスについて述べる.サービスの多様化も一段と進み激動の時代でもある.

キーワード:自動車電話,携帯電話,多元接続,パーソナル通信,パケット通信

1.ま え が き

 本稿では,第1世代と第2世代の移動通信について述べる.第1世代は,アナログ音声を主体とした自動車電話に始まり,携帯機の小形化による携帯電話の萌芽であり,第2世代は,全ディジタルの自動車・携帯電話である.これらについて主要技術と標準化の考え方について述べる.

2.第1世代移動通信

 データトラヒックの急増に対応して,音声サービスを含む全てのトラヒックを高効率に伝送できるInternet Protocol(IP)ベースのコアネットワークが導入された.LTEは,IPベースのコアネットワークとの整合性の良い共有チャネルを用いるパケットベースの無線アクセスネットワーク(RAN)であり,音声はVoIPで実現する.

2.1 方式の狙いと標準化のスタンス

 第1世代の当初の狙いは,いわゆる自動車電話の実現であった.音声をアナログのまま伝送するためアナログ方式とも呼ばれている.その後,半導体や装置の小形化,セクタ化等により携帯電話への提供へと進展したのが大きな流れである.標準化としては,各国を中心としたいわゆる国内・地域標準方式として実現している.我が国では,民間の規格としてオープンとなったのは,通信の自由化後に新規事業者が参入し,更に端末の自由化に合わせてで,後に述べる大容量方式や海外から導入された方式が,1993年に当時の電波産業会の規格として策定された.これは,第2世代のディジタルシステムの規格化の1991年と逆転していることに注意されたい(1)(4)

 国際標準としては,ITU-Rに提案し勧告を得ることで目的を達成した.各国,地域の方式並列標記での承認である.一方で,大容量方式の研究開発では,日米貿易摩擦の影響を受けて,米国からオープンな調達が強く要請され,更に,第2世代での研究開発への大きな影響となった.ただし,それによって,世界の方式との整合性が良くなったことは,時代の流れとも言える.

2.2 方式の基本構成(5)(8)

 方式の基本構成を図1に示す.基地局,回線制御局,自動車電話交換局/移動通信制御局,移動機から構成される.通信回線と制御回線の経路として,二つの考え方がある.方式1は,基地局と自動車電話交換局の間に無線回線制御局を設置する構成で,通信回線と制御回線共に無線回線制御局に収容し,その後,自動車電話交換局に接続する構成である.一方,方式2は,通信回線と制御回線のパスを独立に設定し,通信回線は,基地局から自動車電話交換機に直接収容し,制御回線は,基地局から無線回線制御に収容し,その後,自動車電話交換局へ接続する構成である.方式3は,無線回線制御局の機能を移動通信制御局に設置する構成である.我が国は,導入時のNTT大都市方式は,方式1をとり,中小都市方式で,方式2をとり,後の大容量方式では,方式3をとっている.一方,米国のAMPSは,当初から方式3の構成となっている.方式1と2は,無線と交換の責任分界点を制御局として,それぞれの開発や保守の責任を明確にする考え方である.一方,方式3は,総合としてシステムの最適化や保守を図る考え方である.なお,通信の自由化後には,移動通信制御局と固定網間には,関門交換機を設置している.


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