小特集 6. 移動通信システムの将来展望

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Vol.103 No.2 (2020/2) 目次へ

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移動通信システムの発展と展望

小特集 6.

移動通信システムの将来展望

Prospects of Mobile Communication Systems

太郎丸 真 村田英一 大槻知明

太郎丸 真 正員:シニア会員 福岡大学工学部電子情報工学科

村田英一 正員:シニア会員 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻

大槻知明 正員:フェロー 慶應義塾大学理工学部情報工学科

Makoto TAROMARU, Senior Member (Faculty of Engineering, Fukuoka University, Fukuoka-shi, 814-0180 Japan), Hidekazu MURATA, Senior Member (Graduate School of Informatics, Kyoto University, Kyoto-shi, 606-8501 Japan), and Tomoaki OHTSUKI, Fellow (Faculty of Science and Technology, Keio University, Yokohama-shi, 223-8522 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.2 pp.149-154 2020年2月

©電子情報通信学会2020

abstract

 本小特集の締めくくりとして,移動通信システムの将来を展望する.最初に第6世代以降の移動通信システムで期待されるサービスと要求条件を考察し,5Gを超える必要性,アプリケーションと要求条件の多様化について検討する.続いて,第6世代以降の移動通信システムを実現する要素技術として特に無線アクセス方式について詳しく検討する.また,5Gから本格化する高周波数帯の活用について新たなシステムを考察し,今後本格化すると思われる各種のシステム間連携について取り上げる.最後に無線通信でのAI活用について議論する.

キーワード:次世代移動通信システム,無線アクセス方式,高周波数帯,深層学習技術

1.第6世代以降の移動通信システムで期待されるサービスと要求条件

 一般に「5G」は,IMT-2020のITU勧告(1)に基づき標準化・開発されているRAN(無線アクセスネットワーク)を指すことが多い.そこでは以下の三つのユースケースが示された(2)

 (a)高度化モバイルブロードバンド(eMBB: enhanced Mobile BroadBand)

 (b)大規模マシンタイプ通信(mMTC: massive Machine Type Communications)

 (c)超信頼・低遅延通信(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications)

 では「6G」とは? と言えば,技術はもちろんユースケースも,共通のコンセンサスは定まっていない.しかし5Gのサービス開始が見えてきた現在,6Gに関する展望や議論は既に始まりつつある(3)(7)

1.1 5Gを超える必要性

 次世代通信技術が議論されるとき,「これ以上の高速伝送が必要なアプリケーションはあるのか?」などの意見はこれまでもよく耳にするが,「高速化が新たなサービスを生み出す」のも事実である.ただしEMBBは面的カバーである必要はなく,ホットスポット的な屋外エリアと屋内で十分だろう(3).低消費電力化は特にIoT: Internet of Thingsなどのサービスには重要である(4).また,へき地や海上など遠距離通信によるサービスエリア拡張も望まれている(3)

 ところで通信のディジタル化は,雑音に強いなど多くの恩恵をもたらしたが,伝送遅延だけはアナログより悪い現状がある.特に動画像の遅延は不満足である.支配的要因は動画像のコーデックだが,RANも含めた伝送速度の制限へ対処するためのコーデックが遅延の主因とも言える.遅延の改善はクロスレイヤで考える必要がある.


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