別冊特集 通信の「仕事」発行にあたって─社会基盤の進化に挑戦すること─

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Vol.103 No.2 (2020/2) 目次へ

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通信の「仕事」発行にあたって─社会基盤の進化に挑戦すること─ 編集チームリーダー 津田俊隆

 いろいろな情報がつながって価値を生み,より良い社会の創造に貢献している現在,情報を距離を超えて瞬時に伝える役割を果たしている通信ネットワークは,社会基盤としてますます重要度を増しています.我が国では,多くの研究開発技術者の努力のおかげで快適で高品質な安定した通信環境がいつでもどこでも提供されるようになっており,まさに空気と同じようにあることが当たり前のような存在になっていると思います.一方空気のようになったことで気にかけて注目されることが少なくなり,かえって世間の皆様やこれから専門家として進む道を考える若い技術者の方々にとって,通信の仕事やそこで取り組まれている絶え間ない技術革新の動きを見えにくくしているようにも思えます.

 このような状況を鑑みて,今回通信の仕事についての別冊を刊行することになりました.編集にあたりまして,通信の広がりが大きくなっていることから,編集チームでは以下の点に注目して,各分野で御活躍中の方々に執筆をお願いしました.

― 行政,大学,通信事業者,メーカ,業界団体では担う役割が異なるため,それぞれの状況を紹介して頂く

― 同じ組織内でも,研究開発とサービス提供部門では取組みが異なる.また,研究開発でも,基礎研究,応用研究,実用化研究の差があることから,なるべく多くの側面がカバーできるようにする

― 通信は各産業の基盤になっていることから,技術者の活躍の場が広がっている.そこで通信業界以外での活躍の様子も取り上げる

― グローバル化は必須の流れである.特に通信分野では世界をつなぐ必要性があるために標準化の重要性が高いことから,世界標準化活動の様子を紹介する

 幸いなことに,多くの方からお忙しい中にもかかわらず貴重な寄稿を頂きました.誌面をお借りして,改めて御礼申し上げます.寄稿して頂いた内容を拝見しましたが,それぞれの立場での仕事への取組み内容が,仕事をする上での苦労や喜びとともに生き生きと紹介されており,非常に参考になりました.また,若い方へのメッセージが添えられているものもあり,楽しく読ませて頂きました.それぞれの内容を拝見して総じて感じられたのは,

― 新しい発想が重要で,自らの発想が実用化されて社会で使われることに喜びを感じていること

― 社会のライフラインであることから,安定して安全なサービスを提供する使命感を強く持って取り組まれていること

― ビジネス上の競争戦略をいろいろ考えながら取り組まれていること

― 世界を相手にして活躍されていること

等があります.同じ分野で長年技術開発に携わってきた私も,記述されている内容に非常に共感した次第です.

 この別冊は当初若い方々を対象として進めてきましたが,執筆頂いた方々のおかげで通信分野の現状,通信技術を持つ研究者・技術者の多面的な取組みの様子がよく分かります.そのため多くの年代の方々にとりましても,また他分野が御専門の方にも面白く役に立つものになっていると思います.多くの方に読んで頂き,通信の仕事や通信の広がりを再認識頂くとともに,一人でも多くの若い方がこの世界に足を踏み入れて仲間となり,創造性を発揮して通信の継続的な発展に貢献して頂けるきっかけになればと祈念しています.


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