小特集 1-1 量子アニーリングの現状と展望

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Vol.103 No.3 (2020/3) 目次へ

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1. 量子コンピュータ技術の最前線

小特集 1-1

量子アニーリングの現状と展望

Present Status and Prospects of Quantum Annealing

西森秀稔

西森秀稔 東京工業大学科学技術創成研究院量子コンピューティング研究ユニット

Hidetoshi NISHIMORI, Nonmember (Institute of Innovative Research, Tokyo Institute of Technology, Yokohama-shi, 226-8503 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.3 pp.264-266 2020年3月


本記事の著作権は著者に帰属します.

abstract

 量子アニーリングは,組合せ最適化問題を量子力学の原理を応用して解く汎用アルゴリズムである.最近は組合せ最適化問題にとどまらず,サンプリングや量子シミュレーションへの応用も開拓されつつある.量子アニーリングをハードウェアとして実現した装置が開発・市販され,クラウドサービスを通して企業の現場で最適化問題の解決に応用する動きが出てくるなど話題を呼んでいる.本稿では量子アニーリングの基礎的な考え方を説明した後,現状における問題点を指摘するとともに近未来における発展の方向性を展望する.

キーワード:量子アニーリング,量子コンピュータ,組合せ最適化問題

1.は じ め に

 カナダのD-Waveシステムズ(D-Wave社)が量子アニーリングを実行する装置(D-Waveマシン)を開発して市販している.既に数台が出荷されていてGoogle, NASA, Lockheed-Martin, Los Alamos国立研究所などが実機を購入しているだけでなく,有償のクラウドサービスにより全世界の多くの企業や大学及び政府組織が利用している.日本はクラウドサービスの国別顧客数で最大とのことである.また,日本や米国の国家プロジェクトで独自の量子アニーリング装置の開発が始まっている.こうした状況は一般向けのメディアでもしばしば報道されており,広く社会的な注目を集めている.

 量子アニーリングマシンとは一体どんな装置なのだろうか.どのような原理に基づいて設計され,何の目的に使えるのだろうか.本稿ではこれらの疑問を念頭に置いて,基本的な動作原理である量子アニーリングの提唱者(1)の立場から現状の分析と将来の予測を試みる.

2.何に使えるのか


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