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1. 量子コンピュータ技術の最前線
小特集 1-2
量子力学現象を利用した革新的コンピュータ
Innovative Computing with Quantum Mechanical Phenomena
abstract
長年続いてきたムーアの法則の終えんが現実味を帯びてきた.そのため近年,汎用量子コンピュータや量子アニーリングマシンなどの量子力学現象を積極的に情報処理に利用したコンピュータに大きな注目が集められている.実際,Google,IBM,Intel,Microsoftといった世界的大企業及びD-Wave Systems,IonQなどのベンチャー企業が,汎用量子コンピュータや量子アニーリングマシンの開発を進めている.本稿においては,汎用量子コンピュータ,NISQ(Noisy Intermediate Scale Quantum Computer),量子アニーリングマシンの基礎,最新研究開発動向,展望と課題について紹介する.
キーワード:汎用量子コンピュータ,NISQ,量子アニーリング
コンピュータは現代社会を支える必須のテクノロジーであり,その性能の向上のために多くのリソースが投入されてきた.しかしながら,半導体の微細加工技術による性能向上は限界に近付いてきている.そのため,従来とは異なるアプローチを用いてコンピュータの性能を飛躍的に向上させる手法が必要となってきている.
量子コンピュータは,現在の古典コンピュータとは全く異なる原理で作動して,理論的には高速計算が可能である.量子コンピュータは,量子力学に従って振る舞う状態のダイナミクスを巧みに用いることで問題の解を得る.
量子ハードウェアの方式には,大きく分けて,汎用量子コンピュータ,NISQ(Noisy Intermediate Scale Quantum computer),量子アニーリングの三つが存在する(表1).本稿では,これらを解説する.
古典ビットは0か1の値しか取れないのに対して,量子ビットは0と1が共存するような,「重ね合わせの状態」を作り出すことができる.この古典と量子の違いは,ビットの数を大きくしたときに,極めて大きな差となって現れてくる.例えば,2量子ビットであれば00,01,10,11の四つの状態の重ね合わせを生成することができる.同様にして,個の量子ビットを用いた場合は,個の状態の重ね合わせを生成することができる(図1).このような量子状態を,古典コンピュータ上で表現するには,指数関数的に多くのメモリが必要となる.そのために,古典コンピュータで大規模な量子コンピュータの振舞いを模倣することは極めて難しい.
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