小特集 1. 時刻,時間,周波数の国際標準の変遷と現状

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.103 No.4 (2020/4) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション

小特集 1.

時刻,時間,周波数の国際標準の変遷と現状

Brief History and Overview of the International Time and Frequency Standards

細川瑞彦

細川瑞彦 国立研究開発法人情報通信研究機構

Mizuhiko HOSOKAWA, Nonmember (National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, Tokyo, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.363-367 2020年4月

©電子情報通信学会2020

1.国際標準以前

 時刻に関する基準としては,地球での生活に密着した地球,月,太陽の周期と連動した暦の構築がまず最初の課題であったと思われる.これら天体の生活に密着した周期とは,太陽日,朔望月,太陽年と呼ばれ,物理的な回転の周期である恒星日,月の公転周期,恒星年とはそれぞれ少しずつ異なっている(1).暦については長い歴史があるが,現在では太陽日と太陽年を基準とし,この二つが整数比からずれる分の調整方法を定めたグレゴリオ暦が,日本を含め多くの国で採用されている.

 時間と空間への認識については,力学の基礎を作り上げたニュートンによる,絶対時間と絶対空間の考え方が長く認められており,相対性理論が実用的な意味を持ち始めるまではそれで特に問題はなかった.

 人々が陸路を移動している限りにおいては,山や川など目印がある中の移動であり,時刻に関する高い要求はなかったが,大洋を船で航行する大航海時代になると,陸の見えない海では,太陽,月,星,といった天体を目印にするしかない.しかし天体の出没時刻は経度に大きく依存するため,出発点との経度差を正確に知るには,出発点からの時間経過が正確に分かる時計が必須となった.18世紀半ばにこの開発に成功したのが英国のハリソンであり,英国のグリニッジ天文台が世界の本初子午線の基準となる上で大きな役割を果たしたと考えられる(2)

2.国際標準の制定

 大航海時代や産業革命,通信と交通の発達など近代化の時代を経て,19世紀半ばになると国際標準の必要性が認識されるようになってきた.その中で,二つの国際会議に注目したい.一つはフランスが1875年に開催し,欧米30か国の科学者が集まった計量に関する会議である.この会議に基づき,この年5月20日にメートル条約が締結され,その際に国際度量衡局の設置が決定された.国際度量衡総会についても,1875年の規約に記述されているが,その初回開催は1889年となっている.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。