小特集 2-1 可搬光格子時計の開発と実用化への課題

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Vol.103 No.4 (2020/4) 目次へ

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光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション
2. 基盤技術

小特集 2-1

可搬光格子時計の開発と実用化への課題

Development of Transportable Optical Lattice Clocks for Practical Applications

大前宣昭 髙本将男 牛島一朗 香取秀俊

大前宣昭 国立研究開発法人理化学研究所光量子工学研究センター

髙本将男 国立研究開発法人理化学研究所香取量子計測研究室

牛島一朗 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻

香取秀俊 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻

Noriaki OHMAE Nonmember (Center for Advanced Photonics, RIKEN, Wako-shi, 351-0198 Japan), Masao TAKAMOTO, Nonmember (Quantum Metrology Laboratory, RIKEN, Wako-shi, 351-0198 Japan), Ichiro USHIJIMA, and Hidetoshi KATORI, Nonmembers (Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, Tokyo, 113-8656 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.368-372 2020年4月

©電子情報通信学会2020

1.光格子時計とその可搬化

 高精度・高安定度を実現できる光格子時計(用語)は,既に現在の周波数標準であるセシウム原子泉時計(用語)の実現精度を凌駕する周波数不確かさ10-18を実現している(1).近年は,秒の再定義に向けた時計周波数(用語)の評価や,光時計からの時系(用語)生成(2),可搬装置の開発など,光格子時計の実用化研究が進められている.

 一般相対性理論によると,1秒の長さはその場所の重力ポテンシャルの増加量に比例して減少し,18桁精度の時計を用いると,地上の標高差1cmを検出できる.高精度原子時計の相対論的測地への応用が欧州で始まりつつあり(3),筆者らも理化学研究所(埼玉県)と東京大学(東京都)に設置した光格子時計の高精度周波数比較と従来の測量手法との比較実験を行った(4).今後,実用化に向けて光格子時計の可搬化が重要になっている.

 海外のグループでも光時計の可搬化の研究が進められている.ドイツでは,トレーラー(2.2×3×高さ2.2m)にストロンチウム光格子時計一式を組み,7.4×10-17の系統不確かさを実現している(5).トレーラーをけん引することで移動可能となっており,欧州各地の光格子時計との周波数比較が行われている(6).中国では,カルシウムイオンを用いた7.8×10-17の系統不確かさの可搬単一イオン時計(用語)が報告され,レーザなどの光学系やイオントラップ等を含む真空槽の体積で1.2×0.9×高さ0.5mを実現している(7).ただし,電気機器は含まれていない.欧州宇宙機関ESAのSpace Optical Clock(SOC)プログラムでは,光格子時計を国際宇宙ステーションに搭載するための技術開発が進められている(8)


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