小特集 2-2 光格子時計の時刻基準への実利用──高精度時系実信号の生成及び国際原子時の校正──

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Vol.103 No.4 (2020/4) 目次へ

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光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション
2. 基盤技術

小特集 2-2

光格子時計の時刻基準への実利用

――高精度時系実信号の生成及び国際原子時の校正――

Applying an Optical Lattice Clock to a Time Standard: Time Scale Generation and TAI Calibration

蜂須英和

蜂須英和 国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所

Hidekazu HACHISU, Nonmember (Applied Electromagnetic Research Institute, National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.373-377 2020年4月

©電子情報通信学会2020

1.は じ め に

 グローバルな金融取引や第5世代移動通信システム(5G)等,現代社会においては,より高精度な時刻情報がますます重要になりつつある.

 高精度な原子時計が実現しているのであれば,高精度な時刻がすぐ得られそうに思うが,原子時計は通常の時計とは異なり,時刻を表示するための装置ではない.“原子時計”は,局部発振器からの周波数信号を原子の共鳴周波数を参照して補正することで高精度な基準周波数を供する装置であり,“原子周波数標準”という方が的を射ている.本稿では,光領域の原子周波数標準(光周波数標準)の一つである光格子時計の高精度時系実信号生成への応用と,国際的な標準時である国際原子時TAI(International Atomic Time)の高精度化への貢献について紹介する.

 時系とは,ある起点から秒を積算して得られる時刻の基準座標であり,幾つかの種類があるため,まず現在の国内外の標準となっている時系(標準時系)の生成方法を通して,各標準時系の関係を整理しておく.

 国際度量衡局BIPM(Bureau International des Poids et Mesures)は,世界中の標準研究機関などから400台以上もの原子時計の情報を集め,それらの加重平均から自由原子時EAL(Échelle Atomique Libre)を計算している.更にEALの歩度(秒の長さ)を,世界で10数台稼動している一次及び二次周波数標準(PFS及びSFS)によって「秒の定義値」に基づき校正し,TAIを決定している.最後に,地球の自転に基づく時系の一つである世界時UT1とTAIの時刻差の絶対値が0.9sに収まるように±1sステップでうるう秒調整することで,協定世界時UTC(Coordinated Universal Time)を生成している.そのため,UTCは不連続な時系であり,その歩度あるいは周波数はTAIと正確に同じである.


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