小特集 2-3 日本標準時の分散構築

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Vol.103 No.4 (2020/4) 目次へ

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光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション
2. 基盤技術

小特集 2-3

日本標準時の分散構築

Decentralized Construction of Japan Standard Time

花土ゆう子

花土ゆう子 国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所

Yuko HANADO, Nonmember (Applied Electromagnetic Research Institute, National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.378-382 2020年4月

©電子情報通信学会2020

1.は じ め に

 日本標準時JST(Japan Standard Time)は,日本における標準時として国際的に位置付けられ,国内においても,「時刻の基準」として広く利用されている.

 「標準時」は,時刻を指すこと・実計測でも周波数ではなく時刻差データを用いること・一般的にも時刻の方がなじみやすいこと等から,周波数ではなく時刻(時間)を基に解説されることが多いが,標準時の維持はその基となる正確で安定な周波数があってこそであり,日本標準時発生システムの根幹はこの「標準周波数(周波数国家標準)の生成・維持」にあることを,はじめに述べておきたい.

 本稿では,2.で日本標準時の概要を紹介し,3.で,その生成原理により実現可能となる分散構築に関して,その目的及び原理,更に2018年に開局した神戸副局の実例を紹介する.最後に,標準時の分散構築で可能になる今後の展望を簡単に述べる.

2.日本標準時の概要

2.1 国内での位置付けと国際的な役割

 JSTは,情報通信研究機構NICT(National Institute of Information and Communications Technology)が運用する原子時計群から作られ,協定世界時UTC(Universal Coordinated Time)から9時間シフトした時刻で報時される標準時である.JSTは,人工衛星を仲介とする国際時刻比較により(2.3参照)UTCにトレーサブルであり,通常約20ns以内の同期精度で運用されている.JSTに基づく時刻信号及び標準周波数は,各種供給サービス(2.4参照)を通じて国内で広く利用されている.

 JSTは国内において社会・経済活動を支えるのみならず,UTC構築にも大きな役割を果たしている.UTCは国際度量衡局BIPM(Bureau International des Poids et Mesures)が世界中の原子時計データを集めて構築する国際的な標準時である(1).NICTは衛星を介した国際時刻比較を通じてUTC計算の基となる原子時計データを30年余にわたりBIPMに提供しており,UTCへの寄与率は世界でも上位(6位以内)に位置している.


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