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光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション
2. 基盤技術
小特集 2-4
原子時計チップ
――新たなマイクロデバイスとしての可能性――
Atomic Clock Chip as a New Class Microdevice
CsやRbなどのアルカリ金属原子では,電子のエネルギー準位が,磁気双極子と核磁気の二つのモーメント間での相互作用で,僅かに分裂している(超微細分裂,超微細構造).この分裂によって,アルカリ金属原子では,マイクロ波帯での吸収特性が発現し,その吸収スペクトルを活用して,外部のマイクロ波発振器の発振周波数をフィードバック制御によってロックすることで,超高安定な周波数標準(原子時計)が実現される.原子時計は,この電子軌道に由来する優れた周波数安定性から人工衛星や主要な基地局に配備され,時刻・周波数標準として機器の位置推定や通信網の同期などに広く活用されている.市販されている原子時計は,一般にラックマウントレベルに集積されているが,この原子時計を更にチップレベルにまで小形化できれば,ありとあらゆる無線端末に時刻・周波数標準を実装することが可能となる.これはGPS(Global Positioning System)衛星など測位用衛星システムを一つの頂点とする,従来のトップダウン型の時刻供給・時刻同期システムに対して,全ての端末が相互に校正・補完し合う極めてロバストな同期無線通信網の構築を可能にする.
原子時計の小形化は,N. Cyrらによる,コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT)共鳴を利用した周波数標準の提案に端を発し,2004年,米NIST(National Institute of Standards and Technology)の研究グループより,MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術による原子時計モジュールの小形化が進捗,時計動作の実証にまで至った(1),(2).現在,当該技術はチップスケール原子時計(CSAC: Chip Scale Atomic Clock)として市販化も成されている(3).これらの先駆的な研究開発は,米国にとどまらず各国へと広がり,現在,多くの研究所や企業にて小形原子時計モジュールの開発が進められている.
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