小特集 3-1 光格子時計の測地的活用の意義と展望

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光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション
3. 応用技術

小特集 3-1

光格子時計の測地的活用の意義と展望

Role and Perspective of Optical Lattice Clock for Geodetic Application

宮原伐折羅 田中愛幸

宮原伐折羅 国土地理院地理地殻活動研究センター

田中愛幸 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻

Basara MIYAHARA, Nonmember (Geography and Crustal Dynamics Research Center, Geospatial Information Authority of Japan, Tsukuba-shi, 305-0031 Japan) and Yoshiyuki TANAKA, Nonmember (Graduate School of Science, The University of Tokyo, Tokyo, 113-0033 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.388-391 2020年4月

©電子情報通信学会2020

1.は じ め に

 光格子時計は,非常に安定した時刻標準を与えるものであるが,同時に,地球上の重力ポテンシャルが空間的に異なることによって生じる時計歩度の変化を検出することで物理的な高さの差を精密に与える画期的な測定機器である.

 現在,精密な高さ計測は,水準測量と重力測定によって行っているが,これらの従来技術では,計測に要する時間が長く時間分解能が低いため,計測の期間中に生じる地殻変動や天文潮汐などの影響を適切に除くことが難しい.また,長距離では測定の繰返しにより誤差が累積し,精度の低下が生じる.一方,光格子時計は,従来の技術に比べ,連続観測が可能,機器ドリフトがない,長距離間で直接計測可能のため誤差の累積性がないなどの利点があるために,広大な範囲で系統誤差の少ない高さ計測が可能となることが期待されている.

 また,国際測地学協会(IAG)が2015年に行った決議(1)では,従来複数の定義が用いられてきた物理的な高さの定義を統一するために,高さの記述には重力ポテンシャル数を用いることを推奨している.このため,高さの差も重力ポテンシャル数の差で表すことが望ましいが,従来の水準測量と重力測定では,重力ポテンシャル差を得るためにこれらの観測を組み合わせた区間測定を繰り返す必要があり,例えば,海域に隔てられた遠隔地間などでは精密な直接計測が困難であった.一方,光格子時計は,端点に設置した時計の歩度差のみから重力ポテンシャル差を計測できるため,これらの場所でも系統誤差なく高さの差を与えることが期待されている.


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