特集 1-2 画像認識技術の動向

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特集 1-2 画像認識技術の動向

佐藤真一 正員:フェロー 国立情報学研究所コンテンツ科学研究科

Shin’ichi SATOH, Fellow (Digital Content and Media Sciences Research Division, National Institute of Informatics, Tokyo, 101-8430 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.5 pp.456-460 2020年5月

©電子情報通信学会2020

abstract

 画像認識は,監視カメラの自動監視,自動運転,医用分野での自動診断等での応用が期待されており,近年特に深層学習の進展によりその実用化が急速に進んでいる.本稿では,この画像認識の近年の急速な進展について,画像認識に対するれい明期の試み,機械学習に基づく画像認識による突破口の発見,最近の深層学習による画像認識のブレークスルーを通して概観する.どのようなことができるようになったのか,まだできないことは何か,等についても述べたい.

キーワード:画像認識,機械学習,深層学習

1.は じ め に

 画像認識とは,文字どおり画像を認識する技術であり,与えられた画像を計算機処理によりその画像が何であるのかを知覚し,意味内容を理解する技術である.何をもって意味内容を理解するというか,定義は困難だが,画像認識ができたならばできるであろうタスクが様々検討されている.すなわち,顔画像が与えられたときにそれが誰であるか判断したり,物体の画像が与えられたときにそれが何であるのかを判断するのが典型的なタスクである.

 一方,我々人間を含み,ほとんどの生物は,視覚情報を用いて判断・行動しており,日々画像認識を何の困難もなく実行している.すなわち,目的の果実を見分けて摘み取ったり,障害物に当たらずに移動したりするときに,画像認識を利用している.

 このように人間には極めて簡単な画像認識は,実は計算機には極めて困難な課題である.検討が開始された当初の画像認識は,人間には余りに簡単であるため,困難な問題ではないと誤解された.人工知能研究の巨匠MITのマービン・ミンスキー教授は,1966年のある日,大学院学生を呼び出し,夏休みの宿題に,コンピュータにカメラをつなぎ,シーンを説明するプログラムを作成せよと命じたという(1)(諸説ある).画像認識の問題が学生の夏休みの問題にちょうどいいと考えられたのである.しかしながら,程なく,計算機による画像認識は極めて困難な問題であることが分かってきた.

 本稿では,画像認識に対するれい明期の試み,機械学習に基づく画像認識による突破口の発見,最近の深層学習による画像認識のブレークスルーについて概観する.どのようなことができるようになったのか,まだできないことは何か,等についても述べたい.

2.画像認識研究:れい明期


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