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オリンピック,パラリンピック,そして
小特集 3.
製造現場における通信タイミングに着目したモニタリング及び通信制御
Monitoring and Control of Wireless Communication Timing at Factory Sites
abstract
様々な機器の稼動状況の把握,制御などを目的として,工場,病院,商業施設などの屋内環境へのIoT(Internet of Things)デバイスの導入が進んでいる.このような環境下では,トラヒックが場所的・時間的に集中した結果,パケットの衝突や遅延が発生するが,このような状況下でも安定した通信が望まれる.また,システム全体の動作状況を把握するため,監視対象の周波数帯における混雑具合や電波強度などの情報を把握し,無線品質に問題が生じていないかを監視し,問題が生じている場合には,その原因の特定につながる情報を提供できるシステムが望まれる.本稿では,安定した通信を実現するための通信タイミング制御技術と,物理層情報とMAC層情報を統合的に分析することで,無線品質をより詳細に把握するためのモニタリングシステムについて紹介する.
キーワード:工場無線,無線LAN,送信タイミング制御,モニタリングシステム
本格的なIoT(Internet of Things)時代の到来により,製造,農業,流通,インフラなどでIoT機器が利用されている.例えば,工場においては,製品の品質維持・管理等のため,ロボット,自動搬送車,機械,工具などにセンサ等のIoT機器を取り付け,機器や機械の稼動状況の把握や制御,作業の品質管理等が行われ始めており,一つの狭空間における無線システムの数は1,000以上に達している(1).また,製造現場においては,多品種少量生産の流れの中で,ラインの組換え頻度が高くなるなど,製造システムの柔軟性を高める必要性や,自動搬送車などの移動体との情報交換等から,無線通信の利用が期待されている.一方で,製造現場では製造ラインが稼動し続ける,安全性の確保等の観点から,無線通信への安定性,信頼性が必要となるが,一般的に有線ネットワークに比べ,安定性,信頼性が低く,なかなか導入が進まない面もある(2).
無線通信が不安定となる要因は,大きく分けると(a)電波環境の変化等により,受信電波の不安定化に起因する通信の不安定化,(b)複数の機器から同時に通信が発生することによる混信,干渉による不安定化の二つに分類できると考えている.筆者らは,特に後者の点に着目し,通信タイミング制御の研究開発を進めている.また,実際の製造現場の利用者の観点からすると,高信頼な無線通信ネットワークを用意するだけでなく,無線通信の稼動状況をモニタリングし,不具合がある場合には迅速かつ適切に対応できること,また,無線通信を利用する機器の導入時に,事前に動作検証が行えるといったことも無線通信に対する信頼性の向上に寄与すると考えている.本稿では,通信やイベントのタイミングに着目した,モニタリング,通信制御,動作検証を行うエミュレーション環境に関する筆者らの取組みについて紹介し,最後に一例としてこれらを組み合わせた通信制御の動作状況確認について紹介する.
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