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本会選奨規程第20条(電子情報通信分野において,学術,技術,標準化などにおいて特に顕著な貢献が認められ,今後の進歩・発展が期待される)に基づき,下記の2件を選び贈呈した.
極限屈折率材料の開拓によるテラヘルツ応用システムの研究
鈴木健仁君は,2004年に東京工業大学工学部電気電子工学科,2006年に同大学院理工学研究科電気電子工学専攻修士課程,2009年に同大学院理工学研究科電気電子工学専攻博士課程を修了した.2006年から2009年に日本学術振興会特別研究員を務め,ミリ波分野の研究を推進した.2009年から茨城大学工学部助教として着任し,テラヘルツ波分野の研究を開始し,2015年に茨城大学工学部講師に昇進した.2017年に東京農工大学大学院工学研究院に准教授として着任し,現在に至っている.2018年から国立研究開発法人科学技術振興機構さきがけ(熱制御)研究者を兼任している.
同君は「材料の屈折率・反射・透過を高周波の電磁波領域でいかに自由自在に制御するか」という学術的な問いに挑戦した.人工構造材料のメタサーフェスにより,自然界の材料には存在しない,超高屈折率,ゼロ屈折率,負の屈折率を有する無反射で透明な材料を独自に着想し,次々世代の情報通信周波数帯の0.3~3THz帯で開拓した.
具体的には,超高屈折率・低反射材料(0.31THzで屈折率,反射率5.1%)を実現した.テラヘルツ電磁波領域での高屈折率材料として知られるシリコンの3.4や酸化マグネシウムの3.1などに比べても3倍以上と非常に高い屈折率である.この極限屈折率材料を薄膜メタレンズへ応用し,第6世代無線通信(Beyond 5G)を想定したテラヘルツ波連続発振光源に搭載することで,高指向性(パワー密度4.2倍)も実現した.ゼロ屈折率・無反射透明材料(0.5THzで屈折率,反射率0.8%)や,非常に低損失な負の屈折率材料(0.42THzで屈折率,反射率4.3%)も世界に先駆けて実現した.更に,超高感度なテラヘルツ波帯偏光子を着想し,特許権利化(特許5626740号,US9964678)の上,実施許諾先による製品化を実現した.
以上のとおり,同君の電子情報通信分野の貢献は極めて顕著であるため,本賞を贈呈にするにふさわしい.同君の研究の更なる進展とこの分野でのリーダーとしての活躍を期待する.
第4世代及び第5世代移動通信システムの無線インタフェース物理レイヤデザインの標準化
原田浩樹君は,第3世代以降の移動通信システムの国際標準仕様策定を担う3GPP(3rd Generation Partnership Project)において,第4世代(LTE: Long-Term Evolution及びLTE-Advanced)及び第5世代(5G)の無線インタフェースにおける物理レイヤデザインの標準仕様策定に従事し,移動通信システムの発展・実用化に大きく貢献してきた.
同君が上記活動に従事し始めたのは3GPP Release 12におけるスモールセル向け拡張技術の検討及び仕様策定である.増大する通信トラヒックを収容するため,ネットワークを効率的に高密度化するための要素技術としてスモールセル発見・測定技術を提案し,物理レイヤ仕様と端末性能規定の策定をけん引した.Release 13及び14では,アンライセンス周波数をライセンス周波数と束ねて用いることで通信速度・容量を向上させるLTE-LAA(Licensed-Assisted Access)技術の物理レイヤ仕様策定に従事.世界各国の通信事業者の代表として各社からの要求条件・置局シナリオに関する意見を取りまとめ,TR(Technical Report)作成に貢献したほか,多数の技術提案を行い,世界的に注目を集めていた本技術の早期仕様策定に大きく貢献した.本技術はグローバル端末に実装され米国をはじめとする複数の国・地域において商用導入され通信速度・通信容量向上を実現している.
5Gの初期仕様(Release 15)では,端末と基地局との間の接続確立処理や接続基地局選択処理に必要となる初期アクセス技術・モビリティ技術の物理レイヤ仕様及び端末性能規定の策定を推進したほか,5G端末の物理レイヤ機能実装全体に関する議論の議長を務めたことなどにより,数多くの会社が議論に参加した5G標準仕様策定をまとめ上げた.
以上,同君が担ってきた一連の標準化活動は,4G及び5G移動通信システムの発展・実用化に欠かせないものであり,産業界への貢献は極めて大きいと言える.今後の更なる活躍に期待する.
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