小特集 1. 宙(そら)をひらく宇宙通信

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.103 No.8 (2020/8) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


宇宙通信新時代の幕開け

小特集 1.

宙(そら)をひらく宇宙通信

Policy and Future of Space

西室洋介

西室洋介 総務省国際戦略局宇宙通信政策課

Yosuke NISHIMURO, Nonmember (Global Strategy Bureau, Ministry of Internal Affairs and Communications, Tokyo, 100-8926 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.8 pp.792-797 2020年8月

©電子情報通信学会2020

abstract

 近年の宇宙産業は世界的に大きな転換期を迎えており,ベンチャー企業等が台頭するとともに,各国政府も市場活性化に向けた取組みを推進している.日本でも宇宙基本法や宇宙活動法,衛星リモセン法が作られ,宇宙活動への制度整備が進むとともに,「宇宙基本計画」が策定され今後の宇宙政策の基本方針が公表されている.今後宇宙における活動は通信のプラットホームとして拡大していくとともに,宇宙でのレジャーなど人類の活動領域として大きく広がっていくものと思われる.

キーワード:宇宙活動,宇宙政策,宇宙動向,宇宙通信

1.は じ め に

 日本初の人工衛星「おおすみ」が上げられてから50年が経過した.この間,人工衛星は通信,放送,気象だけでなく地球観測,測位,太陽・天文観測等へとその活用の幅を広げた.

 このような中,2017年12月に総務省では「宇宙利用の将来像に関する懇話会」を立ち上げ,宇宙利用における将来像について議論することにより,短期的及び長期的に取り組むべき方策について検討した.

 短期的方策としては,2018年2月から,「宇宙利用の将来像に関する懇話会」の下で,「4次元サイバーシティの活用に向けたタスクフォース」を開催し,衛星データの利活用促進を進める必要がある旨を取りまとめた報告書を2018年7月に公表した.

 長期的方策については,「宇宙利用の将来像に関する懇話会」の下で,「宙を拓くタスクフォース」を開催し,日本においても,宇宙を新たなビジネスフロンティアとして捉え,ベンチャー企業等における新しい活力の参入を促し,社会的課題の解決と市場の活性化を合わせて実現していくために何をしなければならないか,2030年以降を想定した宇宙利用の将来像を描き,その実現のための課題,そしてICT分野において喫緊に取り組むべき事項等について検討した.

 今回は「宙を拓くタスクフォース」で議論された現在の宇宙分野の動向について報告書の一部の概要を一部現行化しつつ紹介する.

2.宇宙産業の変容と政府の取組み

2.1 閉鎖された宇宙産業から開かれた宇宙産業へ

 (1)従来の宇宙産業の潮流

 従来の宇宙産業開発は,高度な技術と多額の開発費が必要であるため,利益回収が難しく,また,民間企業が自らサービスを提供するには参入障壁が高い分野であった.そのため宇宙産業といえば,民間企業が公的事業という位置付けで,政府等(NASA(米国航空宇宙局),ESA(欧州宇宙機関),JAXA(宇宙航空研究開発機構)等)の宇宙開発プロジェクトを受託し,衛星を開発・製造・運用したり,ロケットを打ち上げたりするという産業モデルが一般的であった.このように,官需にけん引されて発展してきた従来の宇宙関連の民間企業は,Established Space(Old Space)と呼ばれている.

 (2)ベンチャー企業の台頭


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。