小特集 2. 準天頂衛星システム「みちびき」――安全・安心な衛星測位システムの確立への期待――

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Vol.103 No.8 (2020/8) 目次へ

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宇宙通信新時代の幕開け

小特集 2.

準天頂衛星システム「みちびき」

――安全・安心な衛星測位システムの確立への期待――

Quasi-zenith Satellite System “Michibiki”: Expectation to Establish Safe and Secure Satellite Positioning Infrastructure

水野勝成

水野勝成 スカパーJSAT株式会社宇宙・防衛事業部

Katsunari MIZUNO, Nonmember (Space & Defense Business Division, SKY Perfect JSAT Corporation, Tokyo, 107-0052 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.8 pp.798-805 2020年8月

©電子情報通信学会2020

abstract

 スマホの地図アプリなど我々の生活には衛星測位が不可欠であり,米国GPS・ロシアGLONASSをはじめとする全世界衛星測位システムにより衛星測位の社会インフラがほぼ確立されている.その中で準天頂衛星システム「みちびき」が4機体制で2018年11月に実用サービスが開始された.

 本稿では,研究開発による準天頂衛星初号機から4機体制による実用みちびきで用いられている主要技術や各種信号・サービス等を概説する.そして,現在整備が進められている7衛星体制で導入される技術を紹介しつつ,みちびきが日本発の安全・安心な衛星測位システムとして,確固たる地位を確立することを期待する.

キーワード:衛星測位,準天頂,みちびき,GPS,GNSS

1.は じ め に

 いまや車のカーナビはもちろんのこと,スマートフォンの地図アプリ・Google Earth,ポケモンGOで代表される利用者の位置を使うスマホゲーム等,我々の生活に位置情報が不可欠なことは,誰しも認めるところである.この位置情報を求めるときに,最も一般的に利用されているのが衛星測位による方法である.

 衛星測位により位置を求める技法については,誌面の関係で割愛するが,既に米国GPS,ロシアGLONASS,欧州Galileo,中国Beidou(北斗)等により,全世界衛星測位システム(以下,「GNSS」,Global Naviation Satellite System)が形成され,衛星測位の社会インフラはほぼ確立されているといっても過言ではない.

 このような状況で,我が国においても,宇宙基本計画に基づき,準天頂衛星システム(以下「みちびき」)が2018年11月から4機体制による実用サービスが開始されたのは記憶に新しい.我が国も,具体的な構想から20年以上たって,ようやく測位衛星サービスを行う国(プロバイダ国)の仲間入りをしたのである.

 本稿では研究開発から始まった準天頂衛星初号機から4機体制により実用化に至ったみちびきで用いられている主要技術や各種信号・サービス等を概説する.そして,現在整備が進められている7衛星体制で導入される技術を紹介しつつ,将来の衛星測位システムの在り方や課題についても言及したい.

2.JAXAの研究開発から開始されたみちびき

 JAXAの研究開発プロジェクトとして開始された準天頂衛星初号機について振り返っておく.みちびき打上げ当時の資料等に基づいており,以後,研究開発の途中で改修・改善された点は割愛していることがあり,御了承頂きたい.

2.1 準天頂衛星初号機の打上げ

 1990年初頭,車のナビゲーションシステム等,GPSの衛星測位が急速に普及するにつれて,日本においてもその研究開発に向けての機運が高まった.その結果,1997年,旧・宇宙開発委員会にて「我が国における衛星測位技術開発への取り組み方針」(1)が発表された.

 更に郵政省通信総合研究所(現NICT)等から具体的な構想(2)が発表され,経団連が中心となり,民間でその準天頂衛星システムが開発・運用できないかが検討された.その結果,2002年に民間の出資により「新衛星ビジネス株式会社(以下,「ASBC」)」が設立された.


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