小特集 5. 地球―月圏時代に向けた宇宙光通信

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Vol.103 No.8 (2020/8) 目次へ

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宇宙通信新時代の幕開け

小特集 5.

地球―月圏時代に向けた宇宙光通信

Space Optical Communications for the Earth-Moon Sphere Era

荒木智宏

荒木智宏 正員 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構研究開発部門

Tomohiro ARAKI, Member (Research and Development Directorate, Japan Aerospace Exploration Agency, Tsukuba-shi, 305-8505 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.8 pp.822-828 2020年8月

©電子情報通信学会2020

abstract

 国際協力による月有人探査時代が目前に迫っている.本稿ではまず,来るべき地球―月圏時代と月探査計画についてその概要を紹介し,併せてそこで用いられる月―地球間光通信システムへの伝送要求について論じる.次に,宇宙光通信の国際標準化活動で検討されている,長距離・高速通信用規格について概説し,最後にこれらを用いた月と地球間の高速光通信について論じる.

キーワード:国際月探査,宇宙光通信

1.は じ め に

 今回の依頼を受けた際,依頼元はこれまで筆者が行ってきた,宇宙光通信の概説及び最新動向をまとめた報告(1),(2)を念頭に,執筆を依頼したと思われる.一方,宇宙光通信の概説・最新動向は比較的最近でも多数公表されており(3)(5),本稿の時点で更に宇宙光通信の概説・最新動向をまとめることは,屋上屋を重ねるものであると思われる.そこで,今回は衛星通信からはやや外れるかもしれないが,宇宙光通信の中でもまだ緒に就いたばかりと言える,月との光通信を中心に議論を進めて行こうと思う.

 本稿の構成は以下のとおりである.まず,国際協働月有人探査の概要について,可能な限り最新動向を踏まえて紹介する.次に,光通信として,どのような技術・形態の通信が実際に使用されると想定されているのか概説する.最後に地球と月を結ぶ光通信に関する筆者の考えを述べる.

2.国際有人月探査の概要

 国際宇宙探査は,最終的には火星有人探査の実施を目的とし,そのための技術確立を行うことも含めて,まず月の有人探査を国際共同で行う取組みである(6)

 これは現在5機関(米国航空宇宙局(NASA: National Aeronautics and Space Administration),ロシア(Roscosmos),欧州宇宙機関(ESA: European Space Agency),カナダ宇宙機関(CSA: Canadian Space Agency),そして日本(実行は宇宙航空研究開発機構(JAXA))で,国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)が運用されている(7)が,その次の国際協力ミッションとして,米国主導で進められているものである.我が国も2019年10月に参加を正式に表明した(8)

 本稿では,国際宇宙探査の中の月有人探査を,国際月有人探査と称し,国際月有人探査での光通信について議論する.国際月有人探査は,月周回有人拠点(Lunar Orbital Platform-Gateway,以下,ゲートウェイ)と称される,月を周回する小振りな有人宇宙ステーションの実現を中心とし,加えて月着陸・周回ミッションで構成される(9).また月探査で終わるものではなく,その後の火星探査のための技術確立を図るものとされている.探査対象としては,氷の形で水が存在すると期待されている,月の南極域の探査が中心となるものと予想されている.図1に検討中のゲートウェイのコンセプトを示す.なお,ゲートウェイの軌道は月の南極上空の滞在時間が長いNear Rectilinear Halo Orbit(NRHO軌道)という軌道であり,そのイメージを図2に示す.これは

軌道面が常に地球を向き,地球との通信が常時確保できる.


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