小特集 6. 宇宙エレベータ技術とその通信応用

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Vol.103 No.8 (2020/8) 目次へ

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宇宙通信新時代の幕開け

小特集 6.

宇宙エレベータ技術とその通信応用

Space Elevator and Communication Technology for Space Elevator

大野修一 八坂哲雄

大野修一 一般社団法人宇宙エレベーター協会

八坂哲雄 一般社団法人宇宙エレベーター協会

Shuichi OHNO and Tetsuo YASAKA, Nonmembers (Japan Space Elevator Association, Tokyo, 105-0004 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.8 pp.829-834 2020年8月

©電子情報通信学会2020

abstract

 宇宙エレベータは地球や火星,小惑星など太陽系の多くの場所で設置と活用が可能な,現在のロケット技術に代わる次世代の宇宙大量輸送機関である.本稿では宇宙エレベータの全体像と構成要素の概要,その実現が人類社会にどのような恩恵をもたらすのか解説する.また,宇宙エレベータ技術の確立の途上にあるテザー衛星技術と通信技術の開発においてスピンオフを期待できる,静止軌道チェーン衛星の構想の概要についても解説する

キーワード:宇宙エレベータ,テザー衛星,静止チェーン衛星

1.JSEA宇宙エレベーター協会

 日本における宇宙エレベータの実現に向けた取組みは,アメリカ・カナダ・ドイツ・ルクセンブルクなどの欧米に2~3年ほど遅れて,2007年の団体組織化により始まった.それまでの2年間に,北米などでの関連活動を経験したメンバーが主体となり,JSEA(一般社団法人宇宙エレベーター協会,Japan Space Elevator Association)は2008年から会員募集を開始,2009年一般社団法人となり,以来様々な活動をしてきた.現在メンバーは150名ほどの個人正会員と幾つかの賛助企業から成り,組織としても活動内容としても,現在世界最大規模の宇宙エレベータ推進団体である.日本以外の団体としては,欧米での活動を中心としたISEC(国際宇宙エレベーター共同体,International Space Elevator Consortium)や,ミュンヘン工科大学WARR(ミュンヘン工科大学ロケットと宇宙飛行のための科学ワークグループ,Wissenschaftliche Arbeitsgemeinschaft für Raketentechnik und Raumfahrt),IAA(国際宇宙航行アカデミー,International Academy of Astronautics)スタディグループSG3.13などが宇宙エレベータ実現に向けた活動をしている.

2.宇宙エレベータとは

2.1 基本的な構造

 現在,地球の宇宙エレベータが論じられる際にそのベースモデルとなっているのは,米ロスアラモス国立研究所に所属していたエドワーズ博士がNASA(アメリカ航空宇宙局)の依頼で検討して考案した実証のための構築方法/構造モデルである(1).システム全体は以下のような構成である.(一部筆者による追加想定項目を含む.)

 (1)地球ステーション

 太平洋,大西洋,インド洋などの赤道周辺の洋上に浮かべた浮体や船舶で,潮流に対する位置制御やシステム全体の動的制御のために5㎞/h以上の速度で移動できるもの,洋上に発生する積乱雲によるテザー等への落雷を防ぐためのレーザ誘雷設備などを持つであろう.

 (2)静止軌道ステーション(図1①)

 テザー上の赤道上空3万5,800kmの静止軌道上の位置に設置される宇宙ステーションで,ステーション内はほぼ無重力となる.

 (3)カウンタウェイト(図1②)


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