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食とICT
小特集 3.
【物流×ICT】
食品の安全を支える温度検知インク
Time Temperature Sensing Ink for Food Safety
abstract
筆者らの開発した温度検知インクは,設定温度以上で変色し温度を下げても元に戻らないという性質を持つ.このインクとQRコードを組み合わせた温度検知ラベルを保冷が必要な食品の生産時に添付し,物流拠点や販売店で専用のスマホアプリを用いて読み取ることで,食品の個体情報とその時点までの温度逸脱の有無を安価に確認できるシステムを構築中である.温度逸脱の程度に基づいて,食品の鮮度評価を表示することも可能である.
キーワード:温度検知インク,物流,スマホ,鮮度
筆者らの開発した温度検知インク(1)は,設定した温度を超えると時間とともに徐々に発色し,設定温度以内に戻しても元に戻らないという性質を持つ.設定温度より高温になると発色するタイプと低温になると発色するタイプの両方がある.この性質を食品の保冷物流の現場で活用し,管理温度逸脱を検出する仕組みを現在構築中である.
保冷物流において起こり得る温度逸脱のトラブルとしては,荷物の積み替え時に常温にさらす時間が長過ぎた,保冷トラックの予冷が不十分だった,保冷庫内の温度むらにより特定の場所だけ温度が高かった,温度設定を間違えた,など様々な状況が考えられる.
現在,保冷物流の各段階でこのような温度逸脱のトラブルがないことを確認する方法としては,温度ロガーを用いた温度管理が一般的に行われている.しかしコストが掛かるため,トラックやコンテナ単位での管理か,サンプル抽出という形でしか実施できない.それに対し,温度検知インクを食品包装に付与する方式ならば,超低コストで温度逸脱の有無を検出できるため,食品全数の個別管理が可能になる.全数の個別管理ができると,保冷庫内の温度むらのような,配送品全てではなく一部の商品でのみ起こっている問題についても検出が可能となる.
温度管理が必要な食品には冷凍品(-15℃以下),冷蔵品(2℃以上10℃以下),常温品(20℃以下)などがあるが,温度検知インクの発色開始温度はインク成分の配合により調整することが可能であり,これらの設定温度に対応するバリエーションは既に存在する.また,管理温度を超えたときの変色速度も一定範囲で調整可能であり,想定される温度逸脱トラブルの内容に合わせ,適切な感度に設定することが可能である.
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