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食とICT
小特集 5.
【調理×ICT】
レシピを機械可読にする技術とその可能性
Machine Readable Recipe Technology and Its Possibilities
abstract
クックパッドは,人が書いたレシピを機械が理解できるように変換するプロジェクトを進めている.人が書いたレシピを解析する上でどのような問題があり,筆者らがどのように対応しているのかを紹介し,また,どのようなメリットがあるのかも紹介する.
キーワード:レシピ,機械可読,正規化,手順理解
料理は技術によって進化を続けている.古くは石器の発明や,火の制御技術の獲得によって多くの食料が食べられるようになり,近年では冷凍技術や新しい加熱技術の進化によって様々な調理が可能になってきた.この料理の進化に,インターネットが更なる進化をもたらす可能性がある.例えば,調理家電がインターネットからレシピをダウンロードすることによって,「600W 3分」のような単純な設定ではなく,料理に合わせた複雑な設定を実行することができるようになる(注1).
クックパッドは2019年12月時点で,日本国内だけで323万品(1)のレシピを保持している.これらは全て自然言語で記述されたものであり,当然このままでは調理家電はこのレシピを理解することはできない.これらの自然言語で記述されたレシピを機械可読な形式に変換するためのプロジェクトが,Machine Readable Recipe(以下,MRR)プロジェクトである.
本稿では,MRRとは何か,筆者らがどのようにMRRの生成を試みているかを示す.以下,2.でMRRについて解説し,3.で材料名の解析,4.で手順の解析について述べる.
自然言語で記述されたレシピに対して何らかの形式化を実施する提案は既に存在しており,例えば京都大学学術情報メディアセンター自然言語処理グループによる「フローグラフコーパス(2)」がある.これはレシピに記述された文を解析し,単語間の関係を基に無閉路有向グラフを作っている.
これに対し,クックパッドのMRRは「食材の状態変化」に注目してグラフを作成する.図1はにんじんと玉ねぎの野菜いためを表したMRRである.ノードは食材を表現し,エッジはその食材の状態を変化させる調理行動を表現する.図1を見ると,グラフ上部に「Carrot」と「Onion」があり,それぞれCutされ,「Cut Carrot」と「Cut Onion」ノードに遷移する.次に「Oil」ノードとを合わせたノード(n6と表記されたノード)に遷移し,それをいためて最終的に野菜いためノードに至る.
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