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物流業界は,全産業の就労者数の4%を占め,市場規模25兆円の一大産業となっている(1).しかし一方で,相対的に厳しい労働環境による就労者数の減少と,昨今のeコマースの浸透による配送量の急増が,深刻な労働力不足を招いている(2).物流業界での労働力不足というとトラックドライバ不足が想起されるが,物流センターや倉庫などの物流施設内の作業者不足も喫緊の課題となっている.事実,パート全体の有効求人倍率1.65倍に対し,物流施設内のパート作業員の求人倍率は2.75倍と高い(2).
そこで,近年,物流施設では,搬送ロボットを導入し,物流施設内の搬送を自動化する動きが進んでおり(3),政府も2017年に「物流総合施策大網」で,物流施設の自動化・機械化を推進することを示している.
しかしながら,自動化を前提に新規開発されたごく一部の大規模倉庫以外のほとんどの物流施設では,搬送ロボットによる自動化は進んでいない状況である(3).筆者が実際に幾つかの物流施設にヒアリングしたところ,小口多頻度化により配送物が限定できず一つの搬送ロボットで対応できないこと,荷主や時間帯によって搬送ルートが柔軟に変更できないことが,搬送ロボットによる自動化を困難にしている大きな要因になっていることが分かった.更に,世界中の生活様式を一変させつつある新型コロナウイルスの影響により,特に高齢者層においてeコマースの利用が大幅に増加したとの調査報告がなされており(4),配送量の増加と小口多頻度化の傾向はますます強まっていくと予想される.
そこで,本稿では,物流施設内搬送の自動化を実現する新たな搬送システムを紹介する.この搬送ロボットの最大の特徴は,搬送対象物であるかご台車,平台車,ドーリーなど(以降,単に台車と表記する)を2台の搬送ロボットで挟み込みながら搬送するところにある(5).更に,ロボットの知覚であるセンサと知能となるコンピュータを通信ネットワークで遠隔化する構成をとっている.こうすることで,様々な台車を柔軟に搬送でき,物流施設内搬送に適した搬送システムとなることを示す.
従来の搬送ロボットによって物流施設内の搬送を自動化する際の課題について述べる.
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