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今から約50年以上前,1968年7月1日に,全国の地方銀行62行,約4,100店舗が参加して,「全国地方銀行協会データ通信システム」が稼動を開始した.このシステムは,世界で初めて,全国規模で銀行同士をコンピュータネットワークで接続し,リアルタイムの送金を可能にした,意義深いものだ.
国立情報学研究所と日本学術振興会が運営する「発明と発見のデジタル博物館」では,金融業界専用のサービスとしては唯一,この地銀データ通信システムが顕彰されている.顕彰文によれば,ISOコードに準拠した7ビットの情報処理交換用標準コードが全面的に使用されたことや,全回線200bit/sの直通回線を採用したこと,毎分1,200字の速度で動作するプリンタに出力させたことなどが,当時としては画期的であったという.
地銀データ通信システムとその後継の全銀ネットは,日本が世界に誇る決済システムであり続けた.そもそも,全国,全業態の金融機関をシステムで結合し,ほぼリアルタイムで顧客口座に送金できる送金システムを持っている国はそう多くはない.例えば,米国で異なる銀行間で送金をするのは今でも大変だ.このような情報通信システムが,半世紀も前に構築され,その後,深刻なトラブルを起こすこともなく,現在まで安全に使い続けられていることは,日本の銀行業界の大きな誇りである.
そもそも50年前に,このような画期的なイノベーションが可能になったのはなぜだったのか.全国地方銀行協会の史書をひも解いてみよう.
銀行業界が為替事務の合理化のための検討を開始したのは,1960年代初頭である.当時,多くの銀行は個別に全国の支店との間の通信網を構築していた.とはいえ,それらは鑽孔紙テープを記録媒体に用いたテレタイプ(電文自動印字装置)と呼ばれる通信手段であり,ハードウェアも全く貧弱なものだった.
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