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編集にあたって
特別小特集編集委員会委員長 秋山 大
新型コロナウイルス感染症の流行は人々の暮らしを大きく変え,日々の生活や産業の変化は,新しい常識・常態として「ニューノーマル」と呼ばれ,私たちは変化への具体的な対応が求められている.
我々はその対応に向けての有力な鍵が「ディジタルトランスフォーメーション(DX)」にあると着目し,本特別小特集のタイトルとするとともに,四国のフィールドを中心とした「教育」「農業」「防災」等の各分野におけるAIやIoT等を含むICTを活用した研究や実例(実践状況)を,専門家以外にも興味を持って頂けるように分かりやすく紹介することとした.
1章は,地方自治体でのパーソナル知育絵本を用いた試みを紹介頂いた.日本の教育分野はディジタル技術の導入が遅れているとされてきたが,新型コロナウイルス感染症の拡大により,公立小中学校の教育現場ではオンライン環境の準備が急速に進み,EdTechへの期待がより一層高まりつつある.一方で,就学前の幼児教育においては,その重要性が確実に認識されてきてはいるものの,具体的な支援策,特に幼児教育分野におけるディジタルトランスフォーメーション(DX)の実践例などが国内では非常に少ないのも事実である.そこで乳幼児の言語発達に寄与すると考えられる絵本の読み聞かせを題材にして,科学的知見に基づく幼児教育支援の実践例を述べる.
2章は,高等専門学校における新型コロナウイルスに対応した教育のICT化を紹介頂いた.新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって,高専をはじめ多くの学校教育現場ではICTを活用した遠隔授業を行っている.コロナ対策によって変化した学校の仕組みやICTは今後どのように活用されるのか,学生や教員はどのように対応したのか,実例と今後について述べる.
3章は,香川大学におけるDX化技術支援室の設置とその取組みについて紹介頂いた.香川大学は,令和2年4月に大学におけるDX(ディジタル改革)推進のため「DX化技術支援室」を設置し,その後も「DX化推進タスクフォース」を設置するなど,大学のディジタル化を推し進めている.香川大学DX推進戦略/DX推進計画等のDX化技術支援室の設置及び現在取り組んでいる事項について述べる.
4章は,高知県におけるNext次世代施設園芸農業IoP(Internet of Plants)について紹介頂いた.Next次世代施設園芸農業IoPのモットーは,『「楽しく,楽に,儲かる」農業』であり,この実現に向けて,高知県をはじめ大学,地元企業,団体が連携し推進している.本プロジェクトは2027年以降まで継続することが予定されており,各部会の紹介や現在の検討状況,IoPクラウドプロトタイプ構築等の活動内容について述べる.
5章は,NTT西日本における台風災害におけるプロアクティブなり障予測とレジリエントな復旧対応について紹介頂いた.同社では,災害対策におけるプロアクティブなり障予測(台風が接近・上陸する前に通信設備の故障数予測や顧客からの入電数予測による事前準備),及びレジリエントな復旧対応(台風通過後にNTT通信ビルから顧客宅までの区間を能動的に全数試験を行うことでり障規模を把握し,早期復旧体制を素早く確立すること等)を行っている.それらの仕組みや課題,効果,今後の対応について述べる.
6章は,災害時に求められる自動車の新しい機能とその実用化について紹介頂いた.豪雨による水災害は道路寸断や浸水を起こし,避難や救援物資の運搬に支障を来す.また,今後の東南海地震では同様の被害のほか,電力インフラ停止が懸念される.紹介する災害対応型の自動車はこれらの災害に対応し,短距離であれば水上移動または空中移動ができる自動車をコンセプトに研究開発を進め,今後の自動車に求められるものについて述べる.
末尾となりましたが,執筆依頼を御快諾頂いた皆様,編集委員会の皆様,事務局の皆様に感謝申し上げます.
2021年10月号特別小特集編集委員会
委員長 秋山 大(NTT西日本) 幹 事 山崎敏和(NTT西日本) 委 員 都築伸二(愛媛大) 委 員 田房友典(弓削商船高専) 委 員 宋 天(徳島大) 委 員 敷田幹文(高知工科大) 委 員 松下春奈(香川大)
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