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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により,日本国内の公立小中学校の教育現場ではオンライン環境の準備が急速に進み,EdTechへの期待がより一層高まりつつある.一方で,就学前の幼児教育においては,ノーベル経済学賞を受賞したヘックマンの一連の功績(1)で,その重要性が確実に認識されてきてはいるものの,具体的な支援策,特に幼児教育分野におけるディジタルトランスフォーメーション(DX)の実践例などが国内では非常に少ないのも事実である.そこで本稿では,乳幼児の言語発達に寄与すると考えられる絵本の読み聞かせを題材にして,私たちが行っているDX及び科学的知見に基づく幼児教育支援の実践例を紹介する.
乳幼児期における目立つ特徴の一つに言語習得が挙げられる.乳幼児はクーイングや喃語などを経て1歳の誕生日前後で初語(意味のある最初の単語)を話し始め,1歳半以降に急速に語彙を多く発話できるようになる語彙爆発の時期を迎える.その言語発達を下支えするのが養育者からの話しかけ(言語インプット)である(2).
乳幼児は言語インプットを参考にして語彙・文法を自ら分析・学習し,言語を理解し発話できるようになっていくが,その際に養育者が乳幼児に向かって話す自然発話だけでなく,絵本の読み聞かせによる言語情報なども乳幼児の語彙・文法の発達に寄与する可能性が指摘されている(3),(4).その理由として,絵本には養育者の自然発話よりも,多様な語彙(3)と複雑な文(4)が出現し,変化に富む多様な言語インプット環境を提供できるためだと考えられている.また米国で行われた縦断調査(5)では,1~2歳時点で行われた養育者による絵本の読み聞かせ頻度が,8~9歳時の文章読解力と算数文章題の成績,読書への内発的動機付けを予測することを明らかにしている.この効果は,従来研究で交絡していた家庭の社会経済的要因(世帯収入や親の教育歴など)を考慮してもなお残存し,絵本の読み聞かせが寄与する就学後の学力への効果の科学的知見として注目を集めている.
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