特別小特集 6. 災害時に求められる自動車の新しい機能とその実用化──災害対応形水陸・空陸両用電気自動車の開発──

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特別小特集 6. 災害時に求められる自動車の新しい機能とその実用化──災害対応形水陸・空陸両用電気自動車の開発── Innovative Automobile Mechanisms Required in the Event of a Natural Disaster and Their Practical Application : Development of Disaster-responsive Amphibious Electric Vehicles and Air-land Electric Vehicles 山中建二

山中建二 徳島大学高等教育研究センター学修支援部門

Kenji YAMANAKA, Nonmember (Research Center for Higher Education, Tokushima University, Tokushima-shi, 770-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.10 pp.1051-1057 2021年10月

©電子情報通信学会2021

1.ディジタル技術の進歩による災害対策

 水害をはじめ自然災害は以前から多く起こっている.災害とは人々に被害を与えることであるが,土砂崩れや河川の氾濫によって平地の形成や河川の変化が起こり,自然の力によって国土が形成されている.しかし,災害により尊い命が犠牲になるのは防ぐべきだが,自然災害から命を守ることは容易ではない.また,近年の地球環境の変化に伴い災害規模も変化してきている.水害対策では,河川の堤防強化など建設技術の向上により防災対策も向上しているが,工事等も年々追い付けなくなっているのも現状であろう.

 そこで,災害時に命を救い,被害を低減し,緊急時にも対応できる自動車があればと考える.この自動車は災害時専用ではなく,普段の利用を前提とし生活の一部として利用することができる車両で,災害時などの緊急時にも能力を発揮する災害対応形のことを指す.利便性と緊急性を両立した新しいタイプの提案となる.自動車の普及率は高く,車両に緊急時の機能を持たせることによって多くの命を救うことや,救援,避難生活に役立つことを考えた結果である.

 本稿では現在研究開発中の災害対応形の自動車について述べる.ディジタル制御技術によって実現可能となった車両のシステムや,構想について紹介する.ディジタル制御技術の向上によって社会が豊かや便利になるだけでなく,私たちの生活に新たなスタイルを提供している.本稿を防災の観点からお読み頂きたく,DX(ディジタルトランスフォーメンション),IoT,AI等に関する具体的技術を割愛している.

2.災害対応形電気自動車

2.1 災害時における電気自動車の利用

 電気自動車は,バッテリーの電気エネルギーを用いてモータで走行する「純電気自動車」から,エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車,燃料電池自動車も含まれ,これらの車両には,数kW・h~数十kW・hのバッテリーが搭載されている.このように多くの電力エネルギーを持っていることから,電気自動車のバッテリーに蓄えた電気を,家庭で使うシステムも実用化されている.図1に示すようにV 2 H, Vehicle to Homeと総称され,停電時などに家や建物に電力供給を行うことが可能である.また,電力需要が多い時期や,電力平準化といったピークカットにも活用が期待されている(1),(2)

図1 V 2 H, Vehicle to Homeシステム(出典:NISSAN)(1)


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