小特集 1. 5Gから6Gへの無線通信技術の進化と展望

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Vol.104 No.10 (2021/10) 目次へ

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5Gから6Gへの無線通信技術の進化と展望――みんなでつくる6G――

小特集 1.

5Gから6Gへの無線通信技術の進化と展望

Evolution and Prospects of Wireless Communication Technologies from 5G to 6G

大槻知明

大槻知明 正員:フェロー 慶應義塾大学理工学部情報工学科

Tomoaki OHTSUKI, Fellow (Faculty of Science and Technology, Keio University, Yokohama-shi, 223-8522 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.10 pp.1059-1064 2021年10月

©電子情報通信学会2021

1.は じ め に

 急速に発展するAI(Artificial Intelligence)に代表されるディジタルテクノロジーを用いて,社会や経済,産業を変革する「ディジタルトランスフォーメーション(DX)」が注目されている.DXは,現在,世界が直面しているCOVID-19との戦いに関しても,大きな武器となっている.DXでは,ICT(Information and Communication Technology)インフラが重要な役割を果たしている.第5世代移動通信システム(5G)に代表される移動通信システムは,ICTインフラの中核と言っても過言ではない.移動通信システムは,約10年単位で進化している.5Gの次の世代の移動通信システム,すなわちBeyond 5G(6G)の活用が期待される2030年頃には,様々な社会課題やユースケースが想定されるが,それらの解決・実現には,より高度なDX及びそれを支える知的無線通信が必要と考えられる.6Gは将来の移動通信サービスの高度化及び多様化に伴って,引き続き増大が予測されるデータトラヒックに対応しつつ,2030年代の社会課題解決や新たなユースケースを支える極めて高い要求性能を実現する必要がある.本稿では,5G高度化(5G Evolution)と6Gの方向性を概観した後,それらの実現に有望と考えられる技術を紹介する.

2.5G高度化と6Gの方向性

 日本を含め,世界的に商用サービスが開始されている5Gは,産業や社会での様々なユースケースが期待されている.5Gでは,高速大容量移動通信(eMBB: enhanced Mobile Broadband),超高信頼低遅延通信(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications),大規模マシンタイプ通信(mMTC: massive Machine Type Communications)の三つが,機能要件として挙げられている.現在サービス中の5G(New Radio(NR)Release 15)では,それらのうちeMBB及び一部のURLLCを主眼とした3GPPにおける標準化の結果,ダウンリンクの速度を重視したベストエフォート形サービスが主に実現されている(1).今後は,大量のデータのアップロードを活用したサービスや,特に産業向けでは,通信品質保証形のサービスが求められることが予想される.そのため,5G高度化では,アップリンクの性能改善や通信品質保証の実現が期待されている.

 また,5Gはミリ波をサポートする初めての移動通信システムであり,その広帯域を用いた数Gbit/sクラスの超高速無線通信が期待されている.しかし,ミリ波は直進性が強く遮蔽の影響を大きく受けるため,カバレージ改善技術が必要である.ミリ波は,5G高度化での実用化が期待されている.


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