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量子機械学習
4.
量子状態識別の数理の広がり
On the Mathematical Development of Quantum State Discrimination
量子情報処理は,暗号や関数計算をはじめとする応用先に加え,近年機械学習におけるその可能性も期待され,精力的に研究が進められている.その更なる発展のためには,量子情報処理に内在する普遍的な限界を明確化することも重要である.その際,量子情報処理に特有な性質を有する情報読出し部分に着目し,その限界を究明するのが量子状態識別である.本稿の前半では量子状態識別の基本的数理を解説し,後半では近年発展の目覚ましい,分散形量子情報処理における状態識別の最適化についてその数理課題としての重要性を交えて紹介する.
キーワード:量子状態識別,量子暗号,ランダム行列,最適化理論
量子論の誕生により,物理系の状態(電子の位置や光子の偏光の向きなど)やその測定に対する我々の理解は大きく変化した.量子論以前の物理は,物理系の状態の時間発展は幾つかの基本方程式に従って決定論的に進み,「理想的な測定を一回行うだけで物理系の状態の全情報が読み出せる」という前提で構築されていた.しかし,原子などのミクロな物理系の性質が明らかになるに従い,物理系の状態は決定論的に時間発展するものの,測定においては状態の一部の情報のみを確率的に読み出すようにしか作用できないという新たな描像(注1)が量子論により与えられ,物理現象は本質的に確率的な現象であると認識されるに至った(図1(a)).
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