小特集 3. 動的周波数共用の海外動向(世界)

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Vol.104 No.12 (2021/12) 目次へ

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本格的な周波数共用時代の幕開け

小特集 3.

動的周波数共用の海外動向(世界)

Global Trends of Dynamic Spectrum Sharing

飯塚留美

飯塚留美 一般財団法人マルチメディア振興センターICTリサーチ&コンサルティング部

Rumi IIZUKA, Nonmember (ICT Research & Consulting Division, Foundation for MultiMedia Communications, Tokyo, 105-0001 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.12 pp.1223-1227 2021年12月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 動的周波数共用システムの実用化が最も進んでいるのは米国である.米国は,民間の電波利用ニーズに応えるため,連邦政府用周波数の有効利用を図ることに着目し,官民周波数共用枠組みを創設したことが契機となっている.欧州においても,国際的にはIMT(International Mobile Telecommunications)バンドに配分されているものの,国によっては政府機関へ割り当てられているため,民間でも使用可能となるよう,周波数共用システムの導入が検討されてきた経緯があった.5G時代になると,自営網への5G実装ニーズの高まりにより,動的周波数共用はプライベート5Gへの対応策として注目され,6G時代には,動的周波数共用システムは完全に自動化されることが見込まれる.

キーワード:CBRS,DSA,LSA,SAS,SSS

1.は じ め に

 2030年頃に到来するであろうと見込まれている6Gの時代においては,電波利用ニーズの多様化に伴ってIoT(物のインターネット)が爆発的に普及し,周波数の効率的利用の方法が,排他的利用から共同利用に軸足が移ることが予想される.つまり,特定の利用者が周波数帯を専用するのではなく,複数の利用者で共用することが前提となることから,時間,空間,周波数の三つの次元において,干渉・混信・混雑なく周波数をダイナミック(動的)に共用できるメカニズムが必要になると見込まれる.本稿では,周波数共用を前提とした電波利用を見据え,欧米で検討・導入が始まった動的に周波数を割り当てるための周波数アクセスシステムの取組み状況について紹介する.

2.米国の取組み

2.1 PCASTの官民周波数共用政策

 大統領科学技術諮問委員会(PCAST: President’s Council of Advisors on Science and Technology)(注1)は2012年7月,連邦政府用周波数の開放に関する勧告書(「Realizing the Full Potential of Government-held Spectrum to Spur Economic Growth」)をオバマ大統領(当時)に提出した.連邦政府が使用している周波数を民間に明け渡すのは,高コストで実行に移すのに時間を要し,かつ連邦政府の業務を中断させることから,長期的に見ればふさわしい周波数政策とは言えないと判断し,連邦政府が使っている周波数から,官民が共同で利用可能な帯域を1,000MHz幅(“周波数スーパハイウェイ”)創出することを提案した.


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