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本格的な周波数共用時代の幕開け
小特集 7.
周波数共用技術の将来展望
Future Prospects of Dynamic Spectrum Sharing Technologies
Abstract
電波の利用環境に適応して無線パラメータを変化させることにより,異なる無線通信システムが同じ周波数を共用する周波数共用技術は,昨今移動する利用者等も想定し,利用時間,干渉量等に合わせ動的にその無線パラメータを変化させるダイナミック(動的)周波数共用システムとして実用化研究が行われている.この状況を踏まえ,本稿では周波数共用システムの高度化に関する将来展望をこの技術の基礎となるコグニティブ無線技術を参照しつつ行い,高度化システムの構成,課題,要素技術についてまとめる.
キーワード:周波数共用,コグニティブ無線,6G,電波エミュレータ,展望
高速大容量化,超低遅延・超高信頼性,超多数端末接続といった技術的な特徴を持つ第5世代移動通信システム(5G)が全世界で本格的に開始され,5Gを利用した各種システム,アプリケーションの提案が行われつつある.また,5Gを更に発展させたBeyond 5G及び6Gシステム(以降B5G/6Gと呼ぶ)の研究開発が進められている.しかし,このB5G/6Gにおいて大きな課題となるのが,新規周波数の確保の問題である.移動通信に適した6GHz以下の周波数帯においてこのB5G/6Gに対して新規に周波数を確保することは大変厳しい.また,5G用の新規周波数として利用が開始された28GHz帯等のミリ波帯をB5G/6G用の周波数として用いることも想定されるが,この周波数帯において移動通信用に周波数チャネルを十分確保することは大変厳しい.したがってB5G/6G時代においては,移動通信に適した周波数の更なる確保を実現する技術の確立が必要となる.この技術の一つとして,コグニティブ無線技術(1),(2)を基礎とし,移動する利用者も想定して周波数の共用を行うDynamic Spectrum Sharing(DSS),若しくはDynamic Spectrum Access Network(DSA)と呼ばれるダイナミック(動的)周波数共用技術を利用したシステム(以下周波数共用システムと呼ぶ)が検討され,実用化研究が行われている(3),(4).本稿では,B5G/6G時代における周波数共用技術を利用した高度化システムの将来展望に関して,システムの構成,課題,要素技術の観点からまとめる.
本章では,周波数共用システムを実現する上で基礎となるコグニティブ無線技術を示し,高度化について考える.コグニティブ無線は,1999年に「無線機外の世界(Outside world)で観測(Observe)される全ての通信に用いることができるパラメータを用いて,その観測結果を状況判断(Orient),学習(Learn)し,ユーザの要求に応じて,自動的に通信パラメータを変更する完全に再構成可能な無線機」を利活用する技術と定義された(1),(2).本来の定義では,図1に示すように状況判断後,即時(Immediate)に変更する場合はそのまま行動(Act)し,緊急(Urgent)で変更する場合は決定(Decide)後に行動し,通常は,計画(Plan)後に学習等を行い決定した後行動する.しかし,深層学習,機械学習等の技術も昨今確立されつつあるため,この行動に関しても学習を行う場合がある.
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