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コミュニケーションロボットの現状
小特集 2.
心を読むインタラクション
Mind Reading for Interaction
Abstract
AIシステムを搭載した人工物と人とのインタラクションを設計する上で考慮すべき点の一つに,双方の心的状態の存在がある.人は,心的状態を持つとともに,相手(ロボットやAIシステム)に対しても何らかの状態を想定する.特に,人に近いモダリティを利用して人工物がコミュニケーションをする場合,人は人工物に対して人に近い心的状態を想定しやすいことが知られている.本稿では,人とインタラクションする人工物を設計する上で,他者の心的状態を読み合うことの影響を考慮することの重要性について解説する.
キーワード:ヒューマンロボットインタラクション,擬人化,インタラクションデザイン,心の理論
1968年にT. WinogradがSHRDLU(1)を構築し,人と自然言語で会話して物体を操作できるコンピュータの実現の可能性を示してから,人と人工物のインタラクションはどのように変わったのだろうか? 劇的に変わった部分もあれば,相変わらず同じレベルの部分もある.深層学習を中心とした機械学習の発展並びに,画像や会話データの増加によって,画像認識技術や自然言語文を扱う方法が確立した一方で,人とのインタラクションを成立させるためにはまだ欠けている部分も多そうである.本稿は「相手の心を読む」という観点から人と人工物(ロボット・知能エージェント)とのインタラクションについて解説する.
知能ロボットの研究より遅れること2000年前後から人とインタラクションするロボットが登場し始めた.(慶應義塾大学の安西祐一郎名誉教授が始めたPrime Project(2)ではこの取組みを1992年からやっていた.)SONYのAIBOや,筆者も開発に携わったコミュニケーションロボットRobovieは,正しく認識して正確に人とやり取りすることを捨て,人と実時間でインタラクションする過程をうまく再現することに着目していた.インタラクションの成立に重きを置いていた点が,それより以前に開発された人と会話するロボットと大きく異なる.認識機能が貧弱であっても,インタラクションの過程を上手にデザインしてあげることで,人が満足できる形の(むしろ正確に認識し,対話処理していたものよりも満足度の高い形の)会話を実現できることを示した.それ以降様々なコミュニケーションロボットが開発され,その多くがコミュニケーションを成立させる方向性に重点を置く開発を踏襲していた.最新の人間形ロボットPepperでさえ同様のコンセプトで人とのやり取りがデザインされている.
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