1．背　　　　　景

　現在，エジプトの全ての国家政策提言書では，国の豊かな未来のために科学技術が極めて重要であると位置付けている．2014年に採択された憲法では，国が国内総生産（GDP）の1%を研究開発に割り振ることを義務付けている．更に，国が科学的研究の自由を保障すること，国家主権を確立し，研究者や発明者を支援する知識経済を築くための手段として国立の研究機関を振興することを定めている（第23条）．エジプトでは何十年もの間，科学技術の開発は公的機関が中心となり，独占的に実行してきた．ほとんどの研究開発は，高等教育科学研究省が監督する公立の大学及び研究センターで行われてきた．高等教育科学研究省は2011年に高等教育省と科学研究省に分割されたが，2015年に高等教育科学研究省として再統合された．近年，幾つかの私立大学，国立大学，二国間協力によって運営される大学，国際支部キャンパス（IBC）が開設され，その中にはエジプト日本科学技術大学（E-JUST）やズウェイル大学のように，非常に革新的な研究所やプログラムを備えているものもある．エジプトでは研究センターごとに管轄する省が異なっていたが，高等教育科学研究省に属する研究センターは，相互の連携を改善する目的で，科学研究センター最高評議会の傘下に組織化された．