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2030年以降の超スマート社会のためには,光通信ネットワークの継続的な大容量化が必要不可欠であるが,従来の単一モード光ファイバを伝送媒体とした光通信ネットワークの大容量化には限界が見え始めており,その限界を打破する方法として,新たな信号多重化技術である空間分割多重に関する研究開発が活発に行われている.本稿では,将来の超大容量伝送を実現するための空間分割多重伝送用光ファイバ技術の研究動向,並びに今後の展望について紹介する.
キーワード:空間分割多重,数モードファイバ,モード多重伝送,マルチコアファイバ
国内の光通信システムの伝送容量は,過去20年間に1,000倍の大容量化を実現してきたが,2030年以降の超スマート社会のためには,伝送容量を更に100~1,000倍程度拡大する必要があると考えられる.しかしながら,現在の単一モード光ファイバ(SMF: Single Mode Fiber)による伝送容量は,周波数利用効率向上の限界や光増幅器の帯域制限等の観点から,100Tbit/s程度が上限であると見積もられている(1).こうした状況の下で,光通信システムに残された最後の多重軸である空間分割多重(SDM: Space Division Multiplexing)の導入による伝送容量の拡大に関する研究開発が活発に行われている(2).SDMとは,光ファイバ中の空間的な自由度を利用した多重化技術のことであり,光ファイバ中を伝搬する複数の伝搬モードや,光ファイバ中に配置した複数のコアを利用して信号が多重化される.このようなSDM伝送を実現する光ファイバには,限られた空間(光ファイバ)内にいかに多くの伝送チャネルを多重できるかが重要であり,単位面積当りの伝送チャネル数である「空間多重密度」を高めることが求められる.
SDM伝送用光ファイバを分類すると,図1に示すように,一つのコアの中を伝搬する複数の伝搬モードを伝送チャネルとして利用する数モードファイバ(FMF: Few-Mode Fiber)と,1本の光ファイバに収容した複数のコアを伝送チャネルとして利用するマルチコアファイバ(MCF: Multi-Core Fiber)に大別することができる.FMFは,一つのコア中の伝搬モード数を数個から10数個程度に限定した光ファイバであり,空間多重密度の高いSDM用光ファイバとして期待されている(3).FMFを利用した伝送システムは,複数の伝搬モードを多重化して伝送することから,モード分割多重(MDM: Mode Division Multiplexing)伝送と呼ばれる.一方,MCFは,収容したコアの数だけ伝送チャネルが増えることになるが,各コアを単一モードとして利用するだけでなく,MDM伝送技術と組み合わせることができ,ファイバ中のコア多重数と各コアのモード多重数の積()で空間多重数を拡大することができるため,空間多重数の拡張性に優れたSDM用光ファイバである(4).
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