特集 2-12 光の領域と融合する無線通信

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.104 No.5 (2021/5) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


2.超スマート化社会を支えるICTの更なる進化 特集2-12 光の領域と融合する無線通信 Wireless Communications Merging with Photonics 西村寿彦 佐藤孝憲 小川恭孝 大鐘武雄

西村寿彦 正員:シニア会員 北海道大学大学院情報科学研究院情報科学専攻

佐藤孝憲 正員 北海道大学大学院情報科学研究院情報科学専攻

小川恭孝 正員:フェロー 北海道大学大学院情報科学研究院情報科学専攻

大鐘武雄 正員:フェロー 北海道大学大学院情報科学研究院情報科学専攻

Toshihiko NISHIMURA, Senior Member, Takanori SATO, Member, Yasutaka OGAWA, and Takeo OHGANE, Fellows (Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, Sapporo-shi, 060-0814 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.5 pp.485-489 2021年5月

©電子情報通信学会2021

abstract

 ミリ波帯の無線通信は5GやWiGigなどで既に標準化され実用に向かっている.これまでの歴史的な流れを見ても,広い帯域を確保するためには,更なる高周波数化に向かうことは想像に難くない.本稿では,これまで切り離されて個々に研究されてきた無線通信と光技術が融合する領域の研究(テラヘルツ波通信・OAM多重・光MIMO)について紹介し,2030年の超スマート社会への基盤技術となり得るかについて議論したい.

キーワード:テラヘルツ波通信,軌道角運動量多重,光渦多重,光MIMO,RoF

1.は じ め に

 移動通信システムは,およそ10年周期で世代が進んでおり,2020年春にはついに第5世代移動通信システム(5G)のサービスがスタートした.2030年頃に実現が期待されている6Gでは,その速度は100Gbit/sを超えると考えられている(1),(2).高速化を実現するための方策の一つは,広い帯域を確保できる高周波数帯を利用することであり,既に5Gでは数十GHzのミリ波帯の使用が実現された.今後,更なる高周波数化が進み,数百GHzを超えることが予想されている.このような高い周波数帯では,従来の無線通信で用いてきた技術をそのまま使うことが難しくなる代わりに,光の性質に近いことで光技術を導入できるかもしれない.そこで,本稿では,無線通信と光技術が融合する領域の研究(テラヘルツ波通信・軌道角運動量(OAM: Orbital Angular Momentum)多重,光MIMO(Multiple Input Multiple Output))について紹介する.

 2.では,テラヘルツ波を用いる上での問題点とその実現について概要を述べる.なお,テラヘルツ波の周波数範囲は,文献により異なっているが,本稿では100GHz~10THzをその範囲と考えることにする.

 3.では,電磁波,及び,光が持つ物理量であるOAMを用いたOAMモード多重通信の紹介とその問題点について説明する.従来,無線通信の多重化には,時間や周波数といった物理量をそれぞれ直交させたモードに異なる情報を乗せる(変調する)ことで行われてきた.これらは,等位相面が平面となって伝搬する直線偏波や円偏波の直交性を利用して多重化に用いられている.ところが,OAMモードは等位相面がらせん状となって伝搬し,原理的には無限のモードを発生させることが可能である.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。