小特集 3. 農業研究の現場からのIoTデバイスの設計と製造

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ICTによる農林畜産業への取組――回路とシステムの観点から―

小特集 3.

農業研究の現場からのIoTデバイスの設計と製造

Design and Manufacture of IoT Devices Proposed from the Field of Agricultural Research

黒崎秀仁

黒崎秀仁 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター

Hideto KUROSAKI, Nonmember (Western Region Agricultural Research Center, National Agriculture and Food Research Organization, Zentsuji-shi, 765-0053 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.6 pp.538-543 2021年6月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 近年は様々な電子部品や回路モジュールの入手が容易になり,更には基板の小ロット製造サービスの普及が追い風となり,個人でもIoTデバイスを自作できる環境が整っている.これらを活用して農業研究の現場から施設園芸向けのセンサユニットを開発・製造し,設計データを公開するという試みを行ったので紹介する.自作デバイスであればユーザが構造や構成部品を把握しているため,メンテナンスが容易になり調達コストも部品代のみに抑えられるというメリットがある.

キーワード:施設園芸,環境測定,UECS,自作

1.は じ め に

 近年,施設園芸用の環境測定が注目され,様々なメーカから似たような機能を持つセンサユニットが販売されているが,出力するデータの規格が独自のものが多く定型化されていない.更に,気象観測を目的としたセンサであるにもかかわらず気温測定用の通風筒を持たないものがある.通風せずに気温を測定する場合,これらのセンサが出力するのは「日射の影響を受けた温度」であり「気温」とは異なる(図1).測定方法に問題を抱えたまま運用を続けると,大量のデータを蓄積した後になって分析に支障を来すおそれがある.また,湿度センサに寿命があることも余り周知されていない(1).この部分は交換を必要とするが,考慮されていない場合がある.高温多湿の温室に設置した装置は劣化する.もし,環境測定装置が日本中の温室に設置された場合,メーカのサポートが飽和し普及の妨げになるのではないかという懸念があった.この問題を解決するために提案されたのがハードウェアの個人製造である.近年はIoTブームの恩恵により様々な電子部品が購入しやすくなり,基板ですら安価に製造する手段がある.個人で製造した装置であればユーザが構成部品を把握しているため自力でメンテナンスすることも容易になる.そこで「UECS対応センサユニットA型」を設計し構造や構成部品,出力される信号の形式などを公開し,個人製造可能なセンサユニットの標準形を提案したので本稿で紹介する.

図1 気温測定における通風温度センサと非通風温度センサの差

2.主 な 機 能


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