小特集 2. お茶の水女子大学博士課程教育リーディングプログラムの取組とその成果について

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多様化する大学教育――博士課程教育リーディングプログラム――

小特集 2.

お茶の水女子大学博士課程教育リーディングプログラムの取組とその成果について

The Leading Graduate Program at Ochanomizu University and Its Achievements

吉田裕亮

吉田裕亮 お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系

Hiroaki YOSHIDA, Nonmember (Faculty of Core Research, Ochanomizu University, Tokyo, 112-8610 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.6 pp.563-569 2021年6月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 お茶の水女子大学における博士課程教育リーディングプログラムは,イノベーションを創出し続けることのできる高い柔軟性を持った理工系女性博士人材を,産官学が協働して育成することを目指した.本プログラムでは,産業界から博士人材育成の必須要件として寄せられた現場の声を可能な限り具現化したものとして,超領域的な自主協働研究を行う新たな教育手法Project Based Team Study(PBTS)を基幹に据えた.本稿では,本プログラムのPBTSを中心とする具体的な成果と,お茶の水女子大学での大学院教育改革への寄与について報告する.

キーワード:リーディング大学院,産官学協働,超領域自主協働研究,大学院改革

1.プログラムの概要

 本プログラム名(「みがかずば」の精神に基づきイノベーションを創出し続ける理工系グローバルリーダーの育成)にある「みがかずば」は,お茶の水女子大学の前身である,我が国初の女子高等教育機関,東京女子師範学校の開校にあたり,皇后(昭憲皇太后)から明治8(1875)年12月に下賜された御歌

 「みがかずば 玉もかがみも なにかせん 
学びの道も かくこそあり けれ」

に由来する.歌の意は,掘り出された原石は,磨かれて初めて,美しく光り輝く宝石となる.人の学びもまた同じ,ということである.日本最古の校歌として知られ,現在まで歌い継がれている.この「みがかずば」の精神は,原石(自己)を磨くことにより,自己と他者,ひいては世界に変革をもたらすものであり,まさにイノベーション創出の精神に他ならないと考えられる.

 本プログラムでは,この「みがかずば」の精神に基づき,俯瞰力と独創力を備えたグローバルに活躍する理系女性リーダーを育成するための大学院教育を構築し,全学への展開を目指した.本稿では,このプログラムの詳細とその成果について述べる.

1.1 プログラムの目的

 本プログラムは,日本の持続的発展及びより良い世界の実現の一翼を担い,社会が必要となるイノベーションを創出し続けられる理工系女性グローバルリーダーの育成を目指す.今日の少子高齢化社会において「女性の活用は成長戦略の中核をなす」と言われる.このような状況の下,本プログラムでは,特に女性人材が不足している理工系分野(物理,情報など)において,物理・数学・情報を基盤的な素養として持ち,社会の様態やニーズの変化に即応でき,イノベーションを創出し続けることのできる高い柔軟性を持った,グローバルに活躍できる女性博士人材を,産官学が協働して育成することを目的とした.

 そのために教育目標を,確固たる基礎力の獲得,及び実社会における研究開発のイノベーションと異分野協働におけるリーダーシップの涵養においた.そして,後者については,効果的なプロジェクトマネジメントとチームワーク研究によって実践的に達成していく新たな教育手法Project Based Team Study(PBTS)をプログラムの基幹に据えた.更に,多文化共生のグローバル社会においてソフトなリーダーシップが発揮できるよう,本プログラム独自のコースワークにより,Ⅰ:俯瞰的に統合・分析する力,Ⅱ:人間力,Ⅲ:アピール力と言語・交渉力,Ⅳ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー,Ⅴ:情報発信や情報収集に不可欠なIT技術等を,5年間を通して高められるようなカリキュラムを設定した.

 なお,本プログラムは理学専攻とライフサイエンス専攻が協働し,新たな副専攻「グローバル理工学副専攻」を新設し実施した.


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