小特集 3. 山形大学の博士人材教育――フロンティア有機材料システム創成フレックス大学院の成果と展望――

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.104 No.6 (2021/6) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


多様化する大学教育――博士課程教育リーディングプログラム――

小特集 3.

山形大学の博士人材教育

――フロンティア有機材料システム創成フレックス大学院の成果と展望――

Doctoral Education Program of Yamagata University: Achievements and Prospects of Innovative Flex Course for Frontier Organic Material Systems

東原知哉 落合文吾 古澤宏幸

東原知哉 山形大学大学院有機材料システム研究科有機材料システム専攻

落合文吾 山形大学大学院理工学研究科化学・バイオ工学専攻

古澤宏幸 山形大学大学院基盤教育機構

Tomoya HIGASHIHARA, Nonmember (Graduate School of Organic Materials Science, Yamagata University, Yonezawa-shi, 992-8510 Japan), Bungo OCHIAI, Nonmember (Graduate School of Science and Engineering, Yamagata University, Yonezawa-shi, 992-8510 Japan), and Hiroyuki FURUSAWA, Nonmember (Institute for the Promotion of General Graduate Education, Yamagata University, Yonezawa-shi, 992-8510 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.6 pp.570-576 2021年6月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 本稿では,山形大学大学院が文部科学省博士課程教育リーディングプログラム事業として展開してきた,「フロンティア有機材料システム創成フレックス大学院」(iFront)を紹介するとともに,そこから波及した山形大学の大学院教育改革について紹介する.iFrontは,山形大学の強みであり産学連携により世界的に研究をリードしている有機材料をベースとして,多様なセクタで新たな価値を創り出せる博士人材を育成するための教育プログラムである.その人材に必要な能力として「創造性」と「主体性」を設定し,実践的なカリキュラムを中心として教育を行ってきた.iFrontの実績を基にして,対象を拡充した上で後継の博士課程5年一貫教育プログラムであるフレックス大学院(iFlex)を新たに立ち上げるとともに,iFrontの教育内容の一部を全ての学生が受けられるように全学展開していった.

キーワード:山形大学,リーディングプログラム,価値創成,産学連携,教育改革

1.山形大学の教育・研究

 山形大学は,県内4キャンパス,6学部・7大学院研究科に約8,500人の学生数を擁する国立の総合大学である(1).本学は,「地域創成」「次世代形成」「多文化共生」の三つの使命と「創造性及び豊かな人間性を有する人材を育成する」という教育の基本理念に基づき,新時代にふさわしい人間力を養うことで,知・徳・体の調和のとれた人材を社会に輩出することを目指している.このために,実習や,キャリア教育,フィールドワークなどの実践的教育を重視している.その成果は,例えば,本学が,「公務員の就職に強い大学」ランキング(2)で1位(東北地区国公私立大での順位),「本当に就職に強い大学」ランキング(3)で2位(東北地区国公立大での順位)を獲得したことなどに表れている.これを博士人材教育で発展させたのが,文部科学省博士課程教育リーディングプログラムとして作り上げた,本稿で紹介する「フロンティア有機材料システム創成フレックス大学院」(iFront)プログラムである.本コースは中間評価・事後評価において,共に5段階の最高位Sランクを獲得した(4)

 研究面では,大学の組織的・積極的な推進体制に基づいて,総合スピン科学,分子疫学,有機エレクトロニクス,地上絵ナスカ研究,ソフトマテリアル創成等の研究分野で国際的拠点(5)の形成に至っている.特に,iFrontの母体である工学分野がある米沢キャンパスには,有機エレクトロルミネセンス(EL),有機トランジスタ,有機太陽電池,蓄電材料,高分子加工などの最先端有機材料システム分野の基礎から社会実装までの広い研究を推進するためのセンターが2011年以降8棟建設・開所され,国内外で唯一無二の拠点が構築されている(図1).分野別論文引用度指数(物理学&材料科学)ではランキング1位(東北地区国公私立大での順位)を獲得した(6).これらの実践性を重視した教育と研究とが両輪となった基盤を基に,即戦力高度人材の輩出と強い産学連携に基づいた研究成果の創出により,社会に貢献してきた.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。