小特集 4. 東京工業大学グローバルリーダー教育院――その歩みと本学の教育改革への波及,更にはリーダーシップ教育院への発展――

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多様化する大学教育――博士課程教育リーディングプログラム――

小特集 4.

東京工業大学グローバルリーダー教育院

――その歩みと本学の教育改革への波及,更にはリーダーシップ教育院への発展――

Tokyo Tech Academy for Global Leadership: Its History, Ripple Effects on Education Reform, and Further Development into the Tokyo Tech Academy for Leadership

佐藤 勲

佐藤 勲 東京工業大学

Isao SATOH, Nonmember (Tokyo Institute of Technology, Tokyo, 152-8550 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.6 pp.577-583 2021年6月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 博士後期課程修了者に期待される能力の一つとしてリーダーシップが期待されるようになって久しい.本稿では,東京工業大学が実施してきたリーディングプログラムの一つであるグローバルリーダー教育院の設置の経緯や教育内容,直面した課題等を背景に,本学の大学院教育の考え方,教育改革への波及と全学のリーダーシップ育成プラットホームとして設置したリーダーシップ教育院への発展を紹介する.更に,こうした教育課程の修了者,並びにこれに挑む大学院学生の間のネットワークへの期待についても述べる.

キーワード:大学院教育改革,リーダーシップ養成,異分野共創,文理共鳴

1.は じ め に

 本小特集に東京工業大学(以下本学)のグローバルリーダー教育院(Academy for Global Leadership,以下AGL)の取組を紹介しませんかとのお誘いを頂戴した.博士課程教育リーディングプログラム(以下,リーディングプログラム)については別稿で紹介されるので繰り返さないが,AGLは全国で7プログラムが採択されたオールラウンド型のプログラムで,いわゆる総合大学でない大学が実施する唯一のものである.リーディングプログラムとしての評価が必ずしも芳しくないAGLについて御紹介するのはいささか僭越ではあるが,AGLの立ち上げから運営に携わってきた者として,その検討の経緯,歩みと本学の教育改革への波及などについて,少しだけ述べさせて頂く.

2.リーディングプログラム前夜

 AGLにつながる博士課程教育改革の議論が本学で起こったのは,2009年から2010年にかけてであったと記憶している.議論の発端は,2006年度から本学で実施してきた大学院博士一貫教育プログラムの実績を背景に,博士課程修了者の能力を社会に認知頂き,それに見合った処遇を考えて頂くためには,単に専門分野の深い知見・能力だけではなく,世界の科学技術・学術,産業界,官界等をリードできる能力の養成が必要なのではないか,そのためにはこれまでの博士後期課程(とその前段階である修士課程)のあり方を更に変える必要があるのではないかとの危機意識であった.こうした危機意識を持つ教員が専攻分野を越えて結集し,当時の教育担当理事を巻き込んで侃々諤々の議論を行って,プロジェクトやビジネスそのものを企画運営し,イノベーションを創出できるリーダー人材を養成する仕組みの枠組みを描いていった.

 これがある程度形になったのが2010年初頭(2009年度末)である.当初,スーパー博士教育コースと呼ばれていたこのときの仕組みは,教育のアウトカムを「ものづくり」から「ことづくり」へ転換することを目指し,専門的な能力の養成と並行して,MOTや哲学,芸術的センス,環境アセスメント,国際コミュニケーションなどを学ぶ体系とした.また,このスーパー博士教育コースは,このときから修士・博士後期課程を一貫した研究科・専攻横断型の教育体系(今でいうところの学位プログラム)であった.


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