末松安晴賞贈呈

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Vol.104 No.7 (2021/7) 目次へ

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2020年度 第7回 末松安晴賞贈呈(写真:敬称略)

 本会選奨規程第20条(電子情報通信分野において,学術,技術,標準化などにおいて特に顕著な貢献が認められ,今後の進歩・発展が期待される)に基づき,下記の2件を選び贈呈した.

学術界貢献

IoTにおけるモデリングと最適化に関する研究と防災分野への応用

受賞者 董 冕雄

 董 冕雄君は,2006年に公立大学法人会津大学コンピュータ理工学部コンピュータソフトウェア学科,2008年に同大学院コンピュータ理工学研究科修士課程,2013年に同大学院同研究科博士課程を修了した.2009年から2011年に日本学術振興会特別研究員,2010年から2011年に日本学術振興会優秀若手研究者海外派遣事業の助成によりカナダのウォータールー大学Department of Electrical & Computer Engineeringにて訪問研究員を務めた.2013年に国立研究開発法人情報通信研究機構研究員を経て,2014年に室蘭工業大学大学院工学研究科の助教として着任し,同准教授を経て,2019年から同教授,2020年から同副学長に着任し,現在に至っている.

 東日本大震災の教訓でもあるレジリエンスの考え方を踏まえ,社会インフラを高度化していくことが必要であり,そのための手段としてIoTに大きな期待が寄せられている.同君は基礎と応用の両面からIoT基盤技術の研究に取り組み,得られた研究成果を通算300本を超える査読付き論文として発表した.同君は,Web of Scienceにて計算機科学分野の2019年高被引用論文著者に選出されており,電気通信分野の同世代研究者と比較して世界的に見ても突出して高い評価を得ている.

 同君は理論研究の範ちゅうにとどまらず,これまで一貫して行ってきたIoTの研究から得られた知見を活用し,先端技術を高度に融合することで,北海道のように被災地が広域に及ぶ場合にも素早く代替となる通信インフラを構築する技術を開発した.2019年には多くの市民が参加する自治体主催防災訓練にてプロトタイプシステムの実証実験を行った.この一連の取組が認められ,2018年には文部科学省科学技術・学術政策研究所からナイスステップな研究者2018に選定され,2019年には北海道科学技術奨励賞の受賞者として知事表彰された.

 以上のとおり,同君の電子情報通信分野における貢献は顕著であり,本賞を受賞するにふさわしい.同君の研究の進展と今後の活躍に期待する.

区切


産業界貢献

映像符号化方式VVCの研究開発および国際標準化への貢献

受賞者 岩村俊輔

 岩村俊輔君は,2010年に日本放送協会に入局され,2011年から同・放送技術研究所にて超高精細映像システムであるスーパーハイビジョンの効率的な映像符号化方式の研究に従事されています.

 同君は,2018年から開始された新4K8K衛星放送に採用されている国際標準の映像符号化方式HEVC(ISO/IEC 23008-2|Rec. ITU-T H. 265 High Efficiency Video Coding)をベースとした符号化技術の改善研究を手掛け,超解像技術を用いた新しい符号化方式の研究開発に取り組んできました.

 2016年からは,ISO/IECでの国際標準化に従事し,高輝度/広色域映像方式のうち,特にHLG(Hybrid Log-Gamma)方式における符号化特性の分析を行うなど,高輝度/広色域映像における符号化ガイドラインの標準化に寄与致しました.また,同時にHEVC方式の改善技術を提案し,新たな符号化方式の必要性を示すとともに,標準化会議において主観評価実験を担当し,次世代の映像符号化方式であるVVC(Versatile Video Coding)の標準化活動の発足に貢献されました.

 VVCの標準化活動においては,技術改善及び仕様の提案を行うとともに,高輝度/広色域映像の符号化に関する知見を生かし,技術検討グループの副議長として高輝度/広色域映像に適した実験条件の策定及び管理に従事され,VVCは高輝度/広色域映像に適した符号化性能を示す方式として2020年に標準化(ISO/IEC 23090-3|Rec. ITU-T H. 266)されました.高輝度/広色域映像は今後の映像フォーマットの主流と期待されており,VVCの高い符号化性能は次世代の放送システムやネット動画像配信等の発展に多大な貢献を果たすものと期待されています.

 以上のように,同君の映像符号化分野における貢献は極めて顕著であり,今後一層の活躍が期待され,本賞を贈呈するにふさわしい方であると確信致します.

区切


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