解説 ITシステムの開発/移行を支援しDXを加速する最新技術

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Vol.104 No.7 (2021/7) 目次へ

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DXとそれを支える技術シリーズ

 解説 

ITシステムの開発/移行を支援しDXを加速する最新技術

Latest Technologies to Support IT System Developments and Migrations for DX

松尾昭彦 栗原英俊

松尾昭彦 (株)富士通研究所サービスビジネス開発運用・ユニット

栗原英俊 (株)富士通研究所ソフトウェア研究所

Akihiko MATSUO, Nonmember (DevOps Innovation Unit, Fujitsu Laboratories LTD., Kawasaki-shi, 211-8588 Japan) and Hidetoshi KURIHARA, Nonmember (Software Laboratory Digital System Project, Fujitsu Laboratories LTD., Kawasaki-shi, 211-8588 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.7 pp.738-744 2021年7月

©電子情報通信学会2021

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 DX(ディジタルトランスフォーメーション,ディジタル変革)の基盤となるITシステムにはデータ活用,スピード・アジリティ,全体最適が求められるが,そのためにはシステムの開発・運用にも従来とは異なる考え方が要求される.また,陳腐化が進んだ既存システムから新しいシステムへ段階的に移行することも必要となる.本稿では,DXを加速するITシステムの開発を支援する技術と,既存システムからの移行を支援する技術について解説する.

キーワード:DX,ITシステム,ソフトウェア開発支援技術,システム移行

1.DXを推進する上でのITシステムの課題

 ディジタルトランスフォーメーション(DX: Digital Transformation),すなわちディジタル技術の活用によるビジネスの変革が注目を集めている.企業は競争力の維持・強化のためにDXを進め,自らのビジネスモデルを変えようとする動きを強めている.

 ところが,日本では多くの企業がDXに取り組んでいるにもかかわらず実際の変革には結び付いていないと言われている.この問題を「2025年の崖」として指摘したDXレポートは,「ビジネスモデルを変革すべく,新たなディジタル技術を活用できるように既存システムを刷新する判断を経営層が強くコミットすべき」と述べている(1)

 2020年の新型コロナウイルスの世界的な流行により,企業を取り巻く環境は急激に不安定化し,新たな事業環境に合わせた事業変革はあらゆる業界において最優先の取組事項となっている.その中で,DXを実現するための基盤となるITシステムでは,顧客価値を創出する部門を横断した全体最適,素早いデリバリー(システムを稼動させ・利用者に提供すること)と環境変化に迅速対応するスピード・アジリティ(敏捷性),入力情報を即時に利用するリアルタイムなデータ活用の実現が非常に重要である.更に,DXのためのシステム移行を成功させるためには,現行システムの全体像を把握するIT資産の分析・評価,ディジタル技術を活用する競争領域の特定や不要システムの仕分け,それを踏まえたITシステム刷新のプランニングが重要である(2)

 ITシステム構築のスピード・アジリティを向上するには,低コストかつ短期間にシステムを実装し,ビジネス変化に追随できる新たなソフトウェアの開発運用プロセスが重要となる.一方,多くの企業で既存業務はシステム化されており,企業独自の業務ノウハウが実装されているため,現行システムを捨て全てを新しく作り直すのは現実的ではない.ITシステム全体を最適化し,競争優位を確保しながら現行システムをモダナイゼーションしていく,すなわち最新のIT技術に対応させて近代化させることが重要である.従来,それは全て人手で行ってきており,多大な時間と工数が必要だった.それを解決するのがIT資産の現状分析のための技術,仕分け・移行のための支援技術であり,それらを活用することでDXを加速できる.

 本稿ではDX推進に不可欠なITシステムにおいて,スピード・アジリティを実現するための開発支援技術,ITシステム全体の最適化を実現する現状分析のための技術,及び仕分け・移行のための技術の最新動向を紹介する.

2.DXを加速するITシステムの開発支援技術


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