小特集 2-1 LMS 20年の歴史と展望──京都大学でのフルオンライン授業対応を踏まえて──

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Vol.104 No.8 (2021/8) 目次へ

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2.開発者側の視点  
――コンピュータを用いた学習支援環境の整備――

小特集 2-1

LMS 20年の歴史と展望

──京都大学でのフルオンライン授業対応を踏まえて──

20 Years of LMS History and Challenges: Based on Experiences for Full Online Classes

梶田将司

梶田将司 正員 京都大学情報環境機構IT企画室

Shoji KAJITA, Member (IT Planning Office, Institute for Information Management and Communication, Kyoto University, Kyoto-shi, 606-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.8 pp.855-861 2021年8月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 教育学習活動へのWeb技術活用の模索から始まったLearning Management System(LMS)は,2000年代に入り北米の大学を中心に広く普及し,大学におけるミッションクリティカルな基盤システムとして位置付けられた.北米の大学の状況と比べて15年以上の遅れがあったものの,我が国においてもLMSの普及が進む中で,コロナ感染症対策に伴うフルオンライン授業対応の要としてLMSの役割が劇的に変化した結果,ようやく世界に追いつきつつある.本稿では,京都大学におけるフルオンライン授業への対応を踏まえながら,LMSの20年にわたる歴史とその展望について述べる.

キーワード:Learning Management System,オープンソース,オープンスタンダード,eラーニング,オンライン授業

1.れい明期のLMS

 インターネットのキラーアプリケーションは何か? 電子メール,ネットニュース,Web等,様々なアプリケーションが1995年頃から始まったインターネットの普及を通じて世の中に広がる中で,インターネットの更なる普及を促すキラーアプリケーションの模索が続いていた.比較的早い段階からインターネットの利用が始まった大学においても,キャンパスネットワークの整備やインターネットの社会への普及が進むにつれて,大学のホームページが開設されたり,日常の教育活動でのWebの活用が各大学で模索され始めた.例えば,CanadaのUniversity of British Columbia(UBC)のMurray Goldburgは,大学教育でのWebの活用を教材面から模索し,教材ごとに共通する機能をコースツール(Course Tool)として共通化した“WebCT”を学内補助金で開発した(1),WebCTはPerlとC言語で書かれたCGI(Common Gateway Interface)プログラムとして作成・公開され,北米の大学を中心に広がり始めた.

 ちょうどその頃,名古屋大学に新設された情報メディア教育センターに着任,教材作成支援環境に関する研究開発を開始した筆者は,指導教員でもあった板倉文忠教授(当時)の指示の下,WebCTの利用の模索を開始,1998年5月にはUBCへの訪問を通じてソースコードの開示を受け,WebCTの日本語化を開始,実際の授業での教育実践を行いながらその活用を試行した(図1).1999年6月には,第1回WebCTユーザカンファレンスがUBCで開催され,500名を超える参加者が一堂に会した.筆者もこのカンファレンスに参加し,大学教育での活用実践が熱く語られるWebCTユーザコミュニティの重要性を確信し,日本でも同様なコミュニティの形成を開始した(2)

図1 WebCTを用いて実施した計算機基礎数理


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