小特集 3-2 教育環境におけるデータを活用した学習コミュニティ分析手法

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Vol.104 No.8 (2021/8) 目次へ

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3.利用者側の視点  
──コンピュータを用いた学習支援技術の活用――

小特集 3-2

教育環境におけるデータを活用した学習コミュニティ分析手法

Examples of Analysis on Learning Community Using Data from Online and Off-line Learning Environments

多川孝央

多川孝央 正員 九州大学情報基盤研究開発センター教育情報基盤研究部門

Takahiro TAGAWA, Member (Research Institute for Information Technology, Kyushu University, Fukuoka-shi, 819-0395 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.8 pp.884-887 2021年8月

©電子情報通信学会2021

Abstract

 学習を支援するという立場からは,ある学習者の学習の成否のみでなく,学習者が周囲の環境や他の学習者とどのように関わり学習を進めるのかというプロセスも重要なものとなる.ここでは学習者の集団(コミュニティ)内部での学習者間の関係性やコミュニケーションなどを学習支援環境(LMSやSNSなど)の履歴情報や実環境におけるセンサデータなどを用いることにより観察し分析する方法について,そのような情報に基づく学習支援に関心を持つ教育担当者を対象として事例の紹介を行う.

キーワード:BBS,ネットワーク分析,ウェアラブルセンサ,協調関係

1.は じ め に

 多くの学習あるいは教育の場において,学習者は必ずしも孤立あるいは独立した存在ではなく,周囲に存在する他の学習者と対話などを通じて情報を入手し学習を深めること,またそのような他者の存在を学習の動機付けに用いることなどが知られている.このような目的を同じくし学習のために相互に協力する学習者の集団は学習コミュニティと呼ばれる.学習者間のつながりや協力の相互関係を活用する教育にはPBL(Project Based Learning)などが存在するが,多数の学習者間で同時並行的にやり取りが行われることなどから教育者や支援者にとって集団の状態を把握し有効な介入を行うことはしばしば困難であり,ここから,各種情報サービスや情報機器を用いたデータ収集や分析による情報提供などの支援が期待される.本稿ではその方法について,筆者の過去の研究のうちオンライン環境を対象としたSNSの履歴情報の分析と,実環境においてセンサデータを用いて協調関係の推測を試みた事例を紹介する.

2.オンラインの学習コミュニティの分析手法

 学習者の集団によるコミュニケーションや協調関係などをグラフ構造として捉えネットワーク分析の手法により分析する研究が行われている.その中で,オンラインの学習環境上で,個々の学習者が周囲に持つつながりが学習成績と関係するという事例の報告などが存在する(1).これらは,コミュニケーションが学習に及ぼす影響を示し,また学習支援の目的で用いられるLMS(Learning Management System)やSNS(Social Network Service)などの情報サービス上での学習者間の関係性やコミュニケーションを分析しその情報を活用して学習を成功に導くという可能性を示唆している.


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