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制度設計者側の視点
小特集 4.
授業目的公衆送信補償金制度
――概要と今後の展開――
Compensation System for the Transmission of Copyrighted Materials in the Course of Classes: Outline and Future Development
Abstract
授業目的公衆送信補償金制度は,平成30年5月の著作権法の改正を受けて創設され,COVID-19パンデミック下でのオンライン授業に対応するため令和2年4月に緊急的かつ特例的にスタートした.この制度は,教育を目的とする著作物の公衆送信について,教育機関の設置者が補償金を支払う代わりに,新たに権利制限とするというものである.本稿では,制度創設の背景,議論の経緯,運用指針の内容,補償金の考え方について概説するとともに,今後の教育における著作物利用環境の整備に向けて取り組むべきことについて私見を述べる.
キーワード:著作権法,授業目的公衆送信補償金制度,大学教育,著作物,教材
授業目的公衆送信補償金制度(注1)は,平成30年5月の著作権法の改正によって教育の情報化に対応した権利制限(用語)規定等が整備されたことを受けて創設され,令和2年4月28日にCOVID-19パンデミック下におけるオンライン授業に対応するために緊急的かつ特例的にスタートした.この制度の創設に至るまでに長期にわたる議論があり,また制度開始に向けて着実に準備がなされてきた.本稿では,その背景も含めた制度の概要を記述するとともに,教育における著作物の利用促進という点から今後のあるべき方向について私見を述べる.
平成18年1月に公表された文化審議会著作権分科会報告書(3)においてはeラーニング推進のために学校その他の教育機関の授業目的での著作物の自動公衆送信(送信可能化を含む)の是非について論じられた.主要な論点は,オンデマンド型の授業(異時送信)を権利制限の対象とするかどうかということであり,「著作権の保護とのバランスに十分配慮するため,いかに要件を限定しつつ,eラーニングの発展のために必要な措置を組み込むべきかなどについて,教育行政及び学校教育関係者による具体的な提案を待って検討することが適当である」とされていた.しかし,文化庁(4)は教育関係団体としての意見集約がなされなかったことなどから結論に至らなかったとしている.
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