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解説
シャノン限界を達成する符号技術CoCoNuTS
An Introduction of CoCoNuTS: A Coding Technology Achieving the Shannon Limit
A bstract
雑音のある環境下でも信頼性の高い情報の伝送を実現する誤り訂正は,通信を行う上で欠かすことのできない技術である.5Gに採用されたLDPC符号やポーラ符号はシャノン限界(通信路容量)を達成する符号として注目されているが,符号がシャノン限界を達成できる通信路は対称通信路に限定されている.これを克服する符号技術として,筆者らが提案した符号技術CoCoNuTSを紹介する.
キーワード:情報理論,誤り訂正技術,通信路符号,シャノン限界,CoCoNuTS
第5世代移動通信システム(5G)が普及の途上にある中で,既に次世代(6G)以降の通信規格に向けた検討が始まっている.
通信を行う上で,雑音のある環境下でも正しくメッセージ(情報)の伝送を実現する(前方)誤り訂正は欠かすことのできない技術である.例えば,5GではLDPC(Low Density Parity Check,低密度パリティ検査)符号(注1)やポーラ(Polar)符号(注2)などが実装されており,信頼性の高い通信を実現している.また,誤り訂正技術は無線通信に限らず,光通信,メモリ・ハードディスク・光ディスクなどの記録装置,スマートフォンなどで情報を読み取るための二次元コードでも利用されている.あらゆる情報機器の中で利用されているといっても過言ではないだろう.これはすなわち,誤り訂正技術が非常に大きな市場を持っていることを意味しており,技術革新が与える影響は計り知れない.
シャノン(C. Shannon)は1948年の論文「通信の数学的理論」(1)において,雑音のある環境(通信路)が与えられたときに正しくメッセージを伝えることができる効率(注3)には限界があることを示した(注4).このような通信効率の限界は,「シャノン限界」あるいは「通信路容量」と呼ばれている.シャノンは証明の中で限界を達成する符号を提案しているが,素朴な方法ではブロック長に関して指数的に増大する計算量(計算時間・メモリ量)を必要としているためその実行は困難であると考えられている.
シャノン限界を達成する実行可能な符号の構成は,情報理論の70年にわたる課題である.1980年代までは,当時のハードウェアの制約から代数的なアプローチがとられ,各種の線形符号や畳込み符号などが提案された.1990年代に入りターボ符号が提案されたあと,1960年代に提案されていたLDPC符号が再発見(注5)された.更に2000年代に入ってポーラ符号が提案されている.誤り訂正技術の詳細な歴史については文献(2),(3)に記載されている.
ターボ符号やLDPC符号はシャノン限界に近い性能を持つことが確認されており,ポーラ符号はシャノン限界を達成することが完全に証明されている.しかしながら,上記の符号(線形符号)がシャノン限界を達成するのは特殊な通信路に限られており,一般の通信路では限界を達成することはできない(4).これはすなわち,誤り訂正技術にはまだ性能向上の余地が残されていることを意味している.
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