解説 アフターコロナをけん引する生体認証技術

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.104 No.8 (2021/8) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


 解説 

アフターコロナをけん引する生体認証技術

Biometrics Technology Leading the Post-COVID-19 World

今岡 仁 井上 岳

今岡 仁 正員 日本電気株式会社

井上 岳 日本電気株式会社グローバルイノベーション戦略本部

Hitoshi IMAOKA, Member (NEC Corporation, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan) and Gaku INOUE, Nonmember (Global Innovation Strategy Division, NEC Corporation, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.8 pp.907-912 2021年8月

©電子情報通信学会2021

A bstract

 アフターコロナ時代に向けた生体認証技術の動向について概説する.マスクを着用したまま高精度な認証を実現する「マスク対応顔認証技術」,超多人数の識別を実現する「顔・虹彩マルチモーダル生体認証技術」,顔認証をセキュアに実現する「生体特徴保護技術」として,「秘匿生体認証方式」及び「キャンセラブル生体認証技術」を紹介するとともに,これらの適用事例として,スターアライアンスグループにおける事例及びハワイ州5空港における事例を紹介することにより,アフターコロナにおける生体認証技術の活用と今後の展望について述べる.

キーワード:生体認証,顔認証,ニューノーマル,マルチモーダル生体認証

1.は じ め に

 2020年初頭に始まった新型コロナの感染拡大により,社会の在り方が大きく変わろうとしている.ビジネスではテレワーク,教育ではオンライン授業,医療では遠隔診療の普及に弾みがつくなど,これまでの暮らしが一変されようとしている.また,感染地域は一部の国や地域に限られることはない.非接触化社会,非対面化社会への移行は,不可逆な変化と見るべきである.

 非接触や非対面が社会に浸透する過程において鍵を握るのが生体認証である.パスワードなどの知識認証や鍵やカードなどの所有物認証に比較して,「本人なりすまし」に対し頑健である.施設への入退場管理といった従来のユースケースに加え,資金決済・送金の際に求められる厳格な本人確認をも,高精度かつ利便性を確保しながら実現できる.中でも,「顔認証」は,スマートフォンやタブレットに搭載された通常のデバイスで認証可能であり,利便性に非常に優れている.大規模スタジアム・スポーツイベントの入退場管理など,高速で精確な入退場を実現する基盤技術となっている.更に,サーマルカメラなどのセンシング技術との掛け合わせにより,新たな社会価値を提供し得る技術である.

 本稿では,アフターコロナ時代に向けた生体認証技術の動向について概説する.マスクを着用したまま高精度な認証を実現する「マスク対応顔認証技術」,超多人数の識別を実現する「顔・虹彩マルチモーダル生体認証技術」,顔認証をセキュアに実現する「生体特徴保護技術」を紹介するとともに,これらの適用事例を示すことにより,アフターコロナにおける生体認証技術の活用について述べる.

2.マスク対応顔認証技術

 新型コロナ感染拡大下においてマスク着用に対応した顔認証技術への要請が急激に高まった.従来,アジア圏を中心に冬季に利用されていたマスクが,世界中で,外出の際に常時着用されるようになったためである.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。