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解説
データ駆動型人流シミュレーション
People-flow Simulation with Data-driven Approach
A bstract
公共施設や商業施設における,人の動きに関するデータ(動線データ)の分析・活用が近年注目されている.これらの施設では,管理者により人の動線改善施策が検討されているが,その課題抽出には施設内の動線の現状分析が効果的である.一方で,例えば施設レイアウトの変更等,現実に動線データが存在しないケースでは分析が実施できない.そこで我々は,施策の事前評価を実現すべく,機械学習に基づく人流シミュレーション手法を開発した.本稿では,シミュレーション手法の概要,及び空港での実計測データへの適用事例を紹介する.
キーワード:施設運用改善,動線データ,人流シミュレーション,機械学習,ODネットワーク分析
近年,世界的に都市化が急速に進んでおり,2050年までに都市の人口が全人口の70%近くを占めると見込まれている(1).このような人口集中により,交通混雑や公共サービスの不足等様々な問題が発生し,人々のQoL低下を招くことになる.こうした状況に応じて,スマートシティの実現へ注目が集まっている.特に最近では,COVID-19の流行を受け,都市の強じん性が一層問題視される状況にある.
人口集中や混雑に関わる問題において,人の流れの制御は重要な要素の一つである.そのため,公共施設や商業施設における,人や物の動きに関するデータ,すなわち動線データの分析・利活用が近年注目されている.上記のような施設では,ディベロッパーと呼ばれる事業体によって土地の取得から建築,テナントへの賃貸,施設の運用までが統合的に行われている.利用者が屋内外をどのように移動し,何をしているかということを把握することで,施設の効率的な運用につなげることができると考えられる.そのため,屋内外において動線データを測定し,利用状況を定量的に分析することで,施設内の混雑緩和や広告宣伝の施策へつなげたり,施設のセキュリティや安全管理に対応可能なサービスやソリューションが求められている.
一方で,例えばイベント会場におけるブースの配置変更後の動線評価等,現実に動線データが存在しないケースにおいて,分析を行うことはできない.そのため,動線データ分析のみで施設運用改善の施策の有効性を事前に評価することは困難である.これに対し,動線データをシミュレーションによって生成することができると,施策案の評価が容易になる.既存の動線データと,展示物や出入口の配置といったレイアウト等の環境に関する変数の関係を機械学習でモデル化することで,施策を実施した後のレイアウトでの動線データを生成するシミュレーションが構築できると考えられ,これにより検討している施策の効果を定量的に見積もることが可能になる.
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