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解説
独居高齢者見守り機器動向
The Trend in Devices for Monitoring Single Elderly
A bstract
高齢化に伴い,2035年には独居高齢者世帯は800万世帯を超えると予測されている.それに伴い,高齢者の自宅に設置する見守り機器も普及し始めている.本稿では,センサ機器,対話見守りロボット,徘徊時の位置情報把握型機器の動向を説明する.この市場の特徴として,異業種からの参入が盛んなほか,サービス普及に向け企業間や企業・自治体間の協業が推進されている.多くの機器では,家族のみならず自治体や企業等も高齢者を見守ることが可能になっている.
キーワード:独居高齢者,見守りセンサ,見守りロボット,徘徊感知器
今後,独居高齢者の見守り機器のニーズは高まると考えられる.その理由は,日本の独居の高齢者世帯数の増加である.国立社会保障・人口研究所は,65歳以上の独居世帯が,2015年の約630万世帯から2035年には約840万世帯となり約220万世帯増加すること(1)を予測している(図1).
要介護認定を受けない元気な高齢者の独居はもちろんのこと,要介護認定を受けている高齢者の独居も増加すると考えられる.
介護保険を適用したサービスは,施設入居型と在宅ケア型に大別される.厚生労働省によれば,要介護認定者は2018年時点で約660万人おり,そのうち,約430万人が,主に在宅ケア層になる要支援1から要介護2までの高齢者である(2).政府は,高齢者が住み慣れた地域で過ごせるよう,自治体による地域密着型のサービスを推進しており,このことからも在宅ケア層の増加は予測できる.
厚生労働省によれば,認知症高齢者数は,2025年には700万人に上るとされ(3),認知症増加による経済的なインパクトも大きいと考えられる.厚生労働省と慶應義塾大学の研究によれば,認知症によるインフォーマルケアコストは2025年には6.3兆円,2035年には9.6兆円(4)と予測されている.インフォーマルケアコストとは,家族等が無償で介護を実施することによるコストのことで,介護のために離職や休職する逸失賃金なども含まれている(5).今後は,家族が離職や休職することなく,独居の高齢者を見守る仕組みづくりが求められる.
その一方で,65歳以上の親と別居をしている子供世代約1万人を対象とした調査では,見守りサービスの利用者は約1%にとどまり,利用していても配食や見回りなどアナログなサービスが中心である(6).
ディジタルな独居高齢者見守り機器が普及することで,家族が離職したりすることなく遠隔による見守りを実現できる可能性がある.また介護事業者や自治体も,多くの高齢者の状態が把握でき,体制的にも持続可能なソリューションの一つとなるだろう.
本稿の構成として,2.では,センサ型の見守り機器動向,3.では,対話見守り機器動向,4.では,徘徊時の位置情報見守り機器動向について説明する.
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