解説 高度なDXを実現するデータ処理利活用基盤とその実例

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DXとそれを支える技術シリーズ

 解説 

高度なDXを実現するデータ処理利活用基盤とその実例

A Data Linkage Platform for High Value-added DX, FIWARE

中村祐一

中村祐一 正員 NEC中央研究所

Yuichi NAKAMURA, Member (NEC Corpration, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.9 pp.981-988 2021年9月

©電子情報通信学会2021

A bstract

 DX(Digital Transformation,ディジタル変革)の特徴の一つが,「ディジタル化された多種多様なデータを共有してデータ間の連携を取ることにより,より詳細で本質的な情報を抽出して価値を創出できること」とされている.これを実現するためには,取得先が異なる異種のデータを連携させて利活用する仕組みが不可欠である.本稿では,このような多様なデータを連携するためのオープンな仕組み=基盤=プラットホームとしてFIWAREを紹介し,実際にFIWAREを活用したデータ連携によるスマートシティの事例に関して述べる.

キーワード:データ連携,FIWARE,スマートシティ,IoT

1.DXとデータ連携

 社会サービスやビジネスにおいて,DXを進めることのメリットの一つが,実社会の‘もの’や‘こと’をディジタル化して計算機上で扱えるようにすることである.実際に,数値化されているデータに加え,IoT(Internet of Things)やカメラ,センサなどの多様な手段を使って,実社会のあらゆる‘もの’や‘こと’のディジタル化が進んでいる.更に,それらに対して機械学習やいわゆるAI(Artificial Intelligence)を含むディジタル処理をすることにより,効率的な社会が実現され新しい価値が生まれようとしている.例えば,ディジタル化された顔認証が人間の目視による認証と比較して極めて高い精度の認証ができることを利用して,顔認証を使った新しい決済方法などの価値が生まれている.更に,シミュレーション技術を用いてディジタル化されたデータを実社会と同様に再現・予測し,AI技術を活用してデータ内に内在する実社会における課題を抽出して,その解決策の模索に役立たせることもできる.

 よりDXの価値を高めるため,多種多様なデータをディジタル化するだけでなく,それらを包括的に連携させ,単独のデータの処理では明らかにならないような隠された課題や新しい価値を発見し,それらの対応方法の検討を行うように進化しつつある.例えば,スマートシティ構想においては,IoTを使って徹底したディジタル化を行い,インフラサービスにおける都市運営上の課題を解決して街の持続的発展をサポートする.その際,IoTデバイスによるデータ連携が,事故や災害を防ぎ,様々な住民サービスの提供を容易化するための鍵となる.

 多種多様なデータの連携による価値創出の簡単な例として,「商店の売上」と「天候やカメラ画像から推測した周辺の人出」などを連携処理するサービスが想定できる.このサービスによって,例えば「周辺の人出は多いのに売上が上がらない」といった本質的な経営課題を認識することができる.別の例としては,行政が持つ多様な災害データや,地図や降水量に加えてライブカメラによる道路や河川の状態などのオープンデータを組み合わせて,災害時の避難経路や避難場所,各種の備蓄の最適化などの必要性,可能性が詳細に検討できるようになる.このような多種多様なディジタルデータを連携させて利活用することによって新しい価値創出を行う仕組みを「データ連携」と呼ぶ.このデータの連携には,同一時刻のデータの連携や,同一空間のデータの連携,時間的・空間的に連続的,あるいは離散的な多様なデータの連携の可能性があり,それぞれのデータ連携が新たな価値を生み出す(図1).

図1 データ連携による新しいサービス創出


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