解説 メタサーフェス──新しい平面光学素子の原理と産業化への展望──

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 解説 

メタサーフェス

――新しい平面光学素子の原理と産業化への展望――

Metasurfaces: Principles and Perspectives towards Industrialization

髙原淳一

髙原淳一 正員 大阪大学大学院工学研究科物理学系専攻

Junichi TAKAHARA, Member (Graduate School of Engineering, Osaka University, Suita-shi, 565-0871 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.1 pp.39-46 2022年1月

©電子情報通信学会2022

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 メタマテリアルは負の屈折率をはじめとして既存の光学材料にはない屈折率を実現できる人工構造媒質である.近年,メタサーフェスと呼ばれる二次元化したメタマテリアルの研究の進展が著しい.その中でも高屈折率誘電体を用いた誘電体メタサーフェスは金属を用いるメタマテリアルの損失の問題を解決したことで,実用化に近づいている.ここではメタサーフェスの動作原理を紹介し,応用に向けた研究の現状と産業化への展望を述べる.

キーワード:メタマテリアル,メタサーフェス,磁気双極子,ホイヘンスメタサーフェス,完全吸収体,メタレンズ

1.は じ め に

 メタマテリアル(metamaterial)は電磁波に対して負の屈折率を持つ自然界にはない人工構造媒質を実現し,2000年代初頭から広く知られるようになった(1).そのインパクトは余りに大きく,「メタマテリアル=負の屈折率」と考える人は多い.しかし,現在ではメタマテリアルは広く「マテリアルの持つ自然の特性を超える人工構造マテリアル」と捉えられており,負の屈折率はその一つにすぎない.更にそのコンセプトは電磁波にとどまらず音波や熱の制御にも拡張され,自然の材料定数から来る制約から解き放ったと言える.

 近年,フォトニクスの分野ではメタサーフェス(metasurface)と呼ばれる二次元メタマテリアルの研究の進展が著しい(2),(3).波長より極めて薄い平面レンズ(メタレンズ)や位相素子(メタホログラム)が実現され,既存の光学素子を超える性能や機能が出せるようになった.メタサーフェスは三次元ナノ加工を必要とするバルクのメタマテリアルより作製がはるかに容易であり,大面積化やフレキシブル化にも適している.また,メタサーフェスには既存の素子が十分ではないテラヘルツ,中赤外,深紫外波長域での光学素子の実現が期待される.特に金属を用いない誘電体メタサーフェスの登場により,長年の課題であった金属メタマテリアルの持つ損失の問題が解決されたことで,実用化が報告され始めている.更に新しいタイプの完全吸収体や構造色が提案され,集積フォトニクス素子が対象としてこなかった熱工学や印刷などへの展開も始まっている.

 本稿では,はじめにメタマテリアルからメタサーフェスが生まれた経緯とメタサーフェスの動作原理を紹介する.次にフォトニクス分野を中心に応用に関する研究の現状について述べ,産業化へ向けた展望を述べる.

2.メタマテリアルからメタサーフェスへ

 図1(a)に示すように,メタマテリアルはメタ原子(meta-atom)と呼ばれる人工的な光共振器の集合体である(3).メタマテリアルの中でも特にメタ原子を一層のみ平面上に並べて二次元化したものがメタサーフェス(メタ表面)である(図1(b)).メタ原子のサイズや配列の周期は光の真空波長(math)より十分小さくとる(≪math).ここで,メタ原子の配列は必ずしも周期的である必要はなく,ランダムであってもよい.メタ原子の構造が波長より十分小さいことからメタマテリアルには有効媒質近似が適用でき,全体を平均化された有効屈折率mathを持つ均一媒質として扱うことができる.メタマテリアルではメタ原子の構造や配列により有効誘電率と有効透磁率を負の値も含めて独立に制御してmathを制御する.


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