電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
シリコンフォトニクスを用いた光通信素子の研究開発最新動向
10.
シリコン上集積量子ドットレーザの進展
Advances in Quantum Dot Lasers Integrated on Silicon
量子ドットレーザは,高温での安定動作や高い戻り光耐性など,優れた特性を有する究極の半導体レーザであり,シリコン上光電融合集積回路の光源としても期待されている.本稿では,光電融合集積回路への展開に向けた量子ドットレーザの発展を紹介するとともに,貼り合わせ法や転写プリント法,更にはシリコン基板上直接成長などを用いて,シリコン上における量子ドットレーザの集積化技術について,最近の筆者らの成果を中心に紹介する.
キーワード:量子ドットレーザ,シリコンフォトニクス,貼り合わせ法,転写プリント法,直接成長技術
クラウドコンピューティング,ビッグデータ,IoT(Internet of Things),5G(第5世代移動通信システム),人工知能(AI)などの近年の情報化社会の進展により,データセンター内のデータ転送量及び電力消費が急激に増加してきている.このため,データセンターの高速化と低消費電力化を両立できる技術として,金属配線を光配線化し,諸素子を光導波路上に集積するシリコンフォトニクス技術が注目を集めているが,シリコンフォトニクス用光源は,LSI素子近傍の高温環境で高効率・安定動作することが求められる.また,光アイソレータ(用語)不要であることも小形・集積化に向けて重要である.このような要請を満たす最も有望なレーザとして期待されているのが,電子を三次元的に閉じ込める量子ドットを利得媒質とする量子ドットレーザである.しかし,現時点では,量子ドットレーザは化合物半導体でのみ実現可能であるため,シリコン基板上へのハイブリッド集積の手法の開拓が必要であった.
本稿では,量子ドットレーザのシリコンフォトニクスへの展開について論じる.まず,量子ドットレーザのこれまでの発展を概観した後,シリコン光電融合集積回路チップへの量子ドットレーザの搭載に至る進展を紹介する.更に,貼り合わせ法,転写プリント法,直接成長法などの集積化技術によりシリコン上に形成した量子ドットレーザについて,最近の筆者らの成果を中心に論じる.
江崎らによる超格子の提案(1)から12年を経た1982年,筆者の一人(荒川)と榊はナノスケールの三次元閉込め構造の量子ドットの概念を提案した(2).更に,量子ドットを活性層として用いた半導体レーザにおいては,しきい値電流の温度無依存性を理論的に予測するとともに,半導体レーザを30Tの強磁界内に置くことにより実験的にその効果を実証した.通常のバルク半導体内では,電子は三次元的に自由に移動することができるが,量子ドットでは,電子は約10nmの三次元領域に量子的に閉じ込められ完全に量子化される.このため,量子ドットレーザでは,温度の上昇による利得スペクトルの変化が抑制され,原理的には,しきい値電流は温度無依存となる.
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード